最新記事

少子高齢化

2050年の「超高齢化」日本に必要な意識改革

2016年8月23日(火)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

 2050年の日本の人口ピラミッドは<図1>のようになると予測されるが、世界全体の中での位置はどうなるか。横軸に年少人口率、縦軸に高齢人口率の予測値をとった座標上に、200の国を配置すると<図2>のようになる。

maita160823-chart02.jpg

 左上にあるほど年少人口が少なく高齢人口が多い、すなわち少子高齢化が進んだ社会ということになる。

 グラフ中央を右上がりに走る斜線は均等線で、このラインより上に位置している場合、子どもより高齢者が多いことを意味する。2050年では、このような社会が多くなる。日本やドイツは今もそうだが、将来、主要国は軒並みこのラインを超えると予測される。

 日本はその中でもトップに位置し、次いで韓国、ドイツと続く。グラフに国名は記していないが、日本と韓国の周辺にはイタリア、スペイン、ギリシャなど南欧の国々が位置している。

【参考記事】書店という文化インフラが、この20年余りで半減した

 高齢者がマジョリティーの社会が多くなるが、その一方でこの頃には、「支えられる」存在から「支える」存在へと高齢者の社会的役割の変革も進んでいるだろう。老化防止薬の開発など、医療技術の進歩によって、高齢者の就労は今より容易になると想像される。

 少子高齢化が進む未来に関しては悲観的な予測が多いが、それでは生産的ではない。技術革新に期待するのは楽観に過ぎるが、考えなければならないことは年齢や性別による社会的役割の規範を撤廃し、人々が多様なスタイルで社会に貢献できるシステムを構築することだ。問題が深刻な日本では、なおのことその必要性は高い。

 今後の人口動態は、教育システムにも変化を迫るだろう。やせ細る子ども世代にばかり資源を投入するのではなく、成人層にもそれを振り向けないといけない。教育期と仕事期(引退期)の間を往来できる「リカレント教育」の普及が望まれる。それは、「生涯学習社会」という時代のニーズにも合致している。

<資料:国立社会保障・人口問題研究所『将来推計人口』(2012年1月)
    United Nations「The 2015 Revision of World Population Prospects」

筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

飲食料品の値上げ、7月は2105品目で前年比5倍=

ワールド

米上院、税制・歳出法案の審議進める 30日に修正案

ワールド

戦争終結に向けた協議のペースは米とウクライナ次第=

ワールド

アングル:イラン核施設空爆で謎に包まれる濃縮ウラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    メーガン妃への「悪意ある中傷」を今すぐにやめなく…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 7
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 8
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 9
    突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中