最新記事

トルコ

アメリカは大粛清を進めるトルコと縁を切れ

2016年7月29日(金)16時20分
テッド・カーペンター(防衛問題専門家)

 ここ2~3年で、報道機関の弾圧や政敵への妨害行為は着実に悪化していた。クーデターが起こる以前から、強権化の傾向は危険なレベルに達していたのだ。今日のトルコは、欧米の民主国家よりプーチン政権下のロシアに近い。

 国家の安全保障が本当に重大な危機に直面した場合、価値観の相容れない相手とも同盟を組まざるを得ないこともある。第2次大戦中、イギリスとアメリカはナチスドイツのヒトラーに対抗するために、スターリン体制下で飢えと粛清が続くソ連と手を組んだ。しかしこのような倫理上の妥協は例外中の例外だ。

トルコを守るのはいやだ

 エルドアンがぬけぬけと独裁体制を築こうとする中で、アメリカがトルコと緊密な関係を維持する最大の理由は、(9.11後の対テロ戦争から今日の対ISIS掃討作戦まで)中東地域への軍事介入をトルコが支援してくれたからだ。だが軍事介入の失敗が明らかで、トルコも同盟に値しないとわかった以上、アメリカ政府はトルコとの関係を見直さなければならない。

 NATO条約第5条のトルコに対する適用も、直ちに破棄すべきだ。第5条は集団防衛条項で、NATO加盟国が攻撃された場合、これをすべての加盟国への攻撃と見なして、アメリカも防衛にあたる義務があると規定している。

 アメリカの安全保障にとって不可欠でもないのに米兵が命懸けで防衛するのは、それが自由な民主主義国であってもありがたくない。まして隠れ独裁国家を守るためにリスクを負うなど最悪だ。

 アメリカがトルコに関して直面しているのはまさにそうした状況だ。ますます手に負えなくなっているエルドアンとは、もっと注意深い関係を築かなければならない。

This article first appeared on the Cato Institute site.

Ted Galen Carpenter is senior fellow for defense and foreign policy studies at the Cato Institute.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地

ビジネス

米国株から資金流出、過去2週間は22年末以来最大=

ビジネス

中国投資家、転換社債の購入拡大 割安感や転換権に注

ワールド

パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中