最新記事

英EU離脱

イギリスEU離脱で復活する「量的緩和の呪縛」

2016年7月5日(火)10時48分

7月2日、金融危機を受けて2009年に各国中央銀行が量的緩和(QE)を導入した際、緩和のeasingを「永久の」を意味するEternalに置き換えた「QEternal」という言葉が半ば冗談で叫ばれていた。写真は雨雲で覆われたロンドン東部の金融街カナリー・ワーフ。1日撮影(2016年 ロイター/Reinhard Krause)

 金融危機を受けて2009年に各国中央銀行が量的緩和(QE)を導入した際、緩和のeasingを「永久の」を意味するEternalに置き換えた「QEternal」という言葉が半ば冗談で叫ばれていた。危機のどん底から世界経済を立て直すには何年も続く可能性もあったからだ。

 
欧州連合(EU)からの離脱派が多数を占めた英国民投票のショック後は、これが冗談ではなくなり、ポンドやユーロ、円を何百億もつぎ込む新たな量的緩和の波が今にも来そうな気配となっている。

 英国民投票後、世界の債券市場の利回りは数年来の低水準となり、史上最低を記録するものも。欧州格付け大手フィッチ・レーティングスによると、利回りがマイナスの債券は11兆ドル分を超える。

 さらなる利回り下落で、銀行や年金基金のほかさまざまな投資家の収益は一日ごとに萎んでいく。

 イングランド銀行(英中銀)の債券買い入れ額は3750億ポンドで、この4年間は量的緩和を停止しているが、再開する見通し。欧州中央銀行(ECB)、日銀も追加緩和が予想されている。英中銀のカーニー総裁は6月30日、EU離脱ショックによる国内経済への打撃を和らげるため、数週間以内の追加緩和は「おそらくある」と述べた。

 米連邦準備理事会(FRB)でさえも、2014年10月に終了した量的緩和を復活させ「QE4」に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。元FRB当局者で09年の量的緩和導入の際、重要な役割を果たしたピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、ジョセフ・ギャグノン氏は「まず利下げがあり得る。マイナス0.25%にすることでさえ」と指摘する。

「(利下げの後)、さらに必要があればQEが選択肢になる。確率は低いが、離脱ショックでそれを検討する時に少し近づいている」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中