最新記事

自衛隊

防衛省が迎撃ミサイルPAC3改修へ、東京五輪に向け能力強化

2016年7月29日(金)10時33分

7月29日、北朝鮮の挑発行動に懸念を強める防衛省は、2020年の東京五輪開催に向け、来年度から迎撃ミサイル「PAC3」の改修に着手する。写真はPAC3と自衛隊員、都内で2012年12月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

 北朝鮮の挑発行動に懸念を強める防衛省は、2020年の東京五輪開催に向け、来年度から迎撃ミサイル「PAC3」の改修に着手する。

 飛距離、精度とも向上を図り、進歩がみられる北朝鮮の弾道ミサイルへの対処能力を強化する。複数の関係者が明らかにした。

 PAC3はトレーラー式の移動ミサイルで、発射機やレーダーなど複数の装備で構成。自衛隊が保有するすべてのシステムの改修を終えるには、多額の費用と数年間に及ぶ時間を要する。

 このため東京五輪に向け、首都圏に配備する装備を先行させる。来年度予算には1000億円程度の費用を盛り込む方向で調整している。

 改修により飛距離が現行PAC3の2倍の約30キロまで伸びるほか、より速度の速い弾道ミサイルも補足が可能になる。「北朝鮮の『ムスダン』に対応するには、PAC3の能力向上が必要だ」と、関係者の1人は言う。

 北朝鮮は今年に入り、ムスダンとみられる新型の中距離ミサイルを5発発射した。うち4発は失敗したものの、6月に発射した最後の1発は高度1000キロ以上に達し、約400キロを飛行した。日本政府は、一定程度の技術的な進歩があったと分析している。

 防衛省は、ムスダンの射程距離を2500キロから4000キロと想定している。実戦配備されれば日本の全域、さらに米領グアムが圏内に収まる。

 弾道ミサイルに対し、自衛隊は二段構えで対処する。まず、イージス艦から発射した迎撃ミサイル「SM3」が宇宙空間で補足。撃ち漏らした場合、大気圏に再突入後にPAC3で対処する。

 防衛省はSM3の能力向上も米国とともに進めているが、配備時期は決まっていない。新型の迎撃ミサイル「THAAD」の導入も検討している。

 防衛省はロイターの取材に対し「具体的なことは何も決まっていない」と回答。改修を請け負うことになる三菱重工業<7011.T>は「民間企業がコメントする立場にない」とした。

 (久保信博、ティム・ケリー 編集:田巻一彦)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中