最新記事

フィリピン

ドゥテルテ、大統領就任式からメディアを締め出し=公約どおり

2016年6月29日(水)19時41分
ヘンリー・ジョンソン

Lean Daval Jr-REUTERS

<「自分もレイプしたかった」「記者は死んで当然」などの暴言で知られる「フィリピンのトランプ」、ロドリゴ・ドゥテルテが明日、フィリピンの大統領に就任する。だがメディアの直接取材は禁止じられた。民主化後のフィリピンでは初めてのことだ>

 レイプ被害者に言及し「自分もレイプしたかった」──神をも恐れぬこんな暴言で「フィリピンのドナルド・トランプ」と呼ばれたダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテが明日、フィリピンの大統領に就任する。だが、報道陣は就任式の会場を取材できないという。

 民主化後のフィリピン大統領で、報道をここまで締め付けるのは初めてのことだ。

 ドゥテルテは、選挙期間中にも全国を周りながらジャーナリストを侮辱しまくった。報道陣のボイコットは、公約の一つでもあった。そして今回、ドゥテルテの報道官が、大統領就任式は国営メディアが独占的に取材するので、その他すべてのメディアは取材を禁じると発表した。

 犯罪都市と言われた南部ミンダナオ島のダバオ市の治安を劇的に回復した実績を売り物にするドゥテルテは、かねてから報道陣嫌い。記者会見で質問中の女性リポーターをやじり倒し、その模様がテレビ中継で全国に流れたり、ある殺害された記者について「暗殺されて当然」と言ったこともある。

【参考記事】ドゥテルテ次期比大統領、ジャーナリストは「死んで当然」
【参考記事】フィリピン次期大統領ドゥテルテ氏、意外に深い華人とのつながり

会場も屋外から密室へ

 伝統的にマニラの歴史ある公園で開放的に行ってきた就任式は、大統領宮殿の大広間に場所を移して行われる。入れるのは選ばれた招待客と国営メディアだけ。その他メディアはごく一部が庭にカメラなどの機材設置を認められたが、ほかは宮殿内の別室に押し込められ、ストリーミングで式を観ることになる。

 招待されないのは報道機関だけではない。なんと、ドゥテルテの副大統領に就任するレニ・ロブレドも呼ばれない見通しだ。女性の権利や貧困問題を気遣うロブレドは、ドゥテルテの武闘派イメージに合わないせいか、これまでもなかなかアポが取れていない。

 メディアについても、恫喝を繰り返しながら自分に好意的なジャーナリストの選別を行っているのかもしれない。

From Foreign Policy Magazine

 

 

 

 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中