最新記事

中国軍

中国艦、領海侵入した日に日米印の共同軍事訓練で米空母を追尾

2016年6月16日(木)10時25分

 6月15日、中国の軍艦が日本領海に侵入した同日、沖縄本島の東方沖で行われている日、米、インドの共同軍事演習「マラバール」にも中国艦の影がちらついた。写真は米空母から飛び立つF18戦闘機。6日撮影(2016年 ロイター/Andrea Shalal)

中国の軍艦が日本領海に侵入した15日、沖縄本島の東方沖で行われている日、米、インドの共同軍事演習「マラバール」にも中国艦の影がちらついた。3カ国は対潜水艦戦などの訓練など通じ、海洋進出を強める中国をけん制しようとしているが、中国は情報収集艦を派遣して米空母を追尾した。

<南シナ海から後を追う>

共同演習は10日に開始、15日に報道陣に公開された。熱帯の蒸し暑い洋上に浮かぶ米原子力空母、ジョン・C・ステニスから、F18戦闘機が次々と離陸。敵味方に分かれ、対空戦の訓練を行った。

敵の戦闘機や巡航ミサイル役となったF18を、もう一方の戦闘機群と米艦が警戒、探知し、海上自衛隊、インド海軍と連携しながら対処した。

しかし、ステニスの周囲に米軍艦、海自の護衛艦、インド軍艦の姿は見当たらない。電波や通信を拾う中国の情報収集艦から追尾されているため、ステニスは訓練に参加する他の艦艇から距離を取っているのだという。

「中国の船がここから7─10マイル離れたところにいる。南シナ海からずっと(空母を)追いかけてきている」と、ステニスのハフマン艦長は記者団に語った。

この日は、未明に中国軍艦が鹿児島県口永良部島沖の日本領海に侵入。この船も情報収集艦で、日本政府は中国の意図の分析を急いでいる。関係者によると、佐世保港からマラバール訓練海域に向かうインド艦艇を追尾していたとみられる。

<フィリピンに立ち寄ったインド海軍>

日、米、インドがマラバールを実施するのは3年連続。前回は昨年10月にインド洋に接するベンガル湾で行った。今回は2年ぶりに日本近海、しかも沖縄本島の東方沖という、中国軍が西太平洋に出るのをふさぐような海域で実施している。    

マラバールはもともと米、インド海軍の2国間訓練だった。中国との経済関係が揺らぐことを懸念したインドは、日本を含めた3カ国の演習に拡大することに乗り気ではなかったが、中国が中東への海上交通路(シーレーン)確保にインド洋への進出を強めると、3カ国は急速に距離を縮め始めた。

インドは今回の訓練に、フリーゲート艦など4隻を派遣。南シナ海で領有権をめぐって中国と争うベトナムのカムラン港、フィリピンのスービック港に立ち寄っている。「南シナ海は中国の海ではない、インドは中国と係争するフィリピンやベトナムとも友好関係にある、というメッセージだろう」と、日本の防衛研究所アジア・アフリカ室長の伊豆山真理氏は言う。

<中国の潜水艦を警戒>

日、米、インドが特に警戒しているのが、中国の潜水艦の動き。2006年10月、沖縄付近で中国のソン級潜水艦が米空母キティホークのすぐ近くに浮上。10年4月にはキロ級潜水艦が沖縄本島と宮古島の間を抜けて太平洋に進出した。

インド洋でも13年ごろから中国潜水艦が動きを活発化させており、14年9月には沿岸国のスリランカのコロンボ港に寄港してインドをいらだたせた。いずれ核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が、南シナ海や西太平洋、インド洋を自由に動きまわることを3カ国は恐れている。

今回の訓練でも、潜水艦を探知して追尾する対潜水艦戦に力を入れている。米海軍は最新の哨戒機と原子力潜水艦を、海上自衛隊は対潜能力を備えたヘリコプター空母と哨戒機を投入。インドも対潜ヘリコプターを参加させた。

自衛隊の幹部は「マラバールは単なる親善訓練ではなく、実際の戦術、技量を向上させるためのもの。これを見た中国は、作戦や戦術を見直す必要があると考えるだろう」と話している。

(久保信博 編集:田巻一彦)



[嘉手納町(沖縄県) 15日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏 、 ホルムズ海峡に多くの国が軍艦派遣と

ビジネス

イラン情勢注視続く、FRB金利見通しも焦点=今週の

ワールド

イスラエル、レバノンと数日内に協議へ ヒズボラと戦

ワールド

北朝鮮の金総書記、多連装ロケット砲の発射訓練視察=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 9
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 10
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中