最新記事

スイーツ

ポルトガルで出合う究極のエッグタルト

2016年6月6日(月)15時00分
エマ・ジェイコブズ

Forster-Ullstein Bild/GETTY IMAGES

<門外不出の秘伝レシピを知るのはたった3人。修道院で生まれた味を守り続けるリスボンの老舗に世界中の観光客が殺到>

 さくさくと香ばしいパイ生地の中に濃厚なカスタードクリームがたっぷり詰まったエッグタルトは、ポルトガル生まれの人気ペストリー。ポルトガル語でパステル・デ・ナタと呼ばれるこのスイーツの起源は、かつて国内各地に存在した修道院にあると伝えられている。修道院で洗濯した衣類やシーツをのり付けする際に大量の卵白を使ったため、余った卵黄の活用法として生まれたというのだ。

 パステル・デ・ナタのサイズや形状は地域によって異なるが、首都リスボンの一帯では昔から小さな丸形のものが受け継がれてきた。なかでも有名なのは、1837年の創業以来、リスボン市内のベレン地区に店を構え続けてきた老舗パスティス・デ・ベレンのもの。店のすぐ近くにあるジェロニモス修道院で生み出されたとされる秘伝のレシピを、今もかたくなに守り続けている名店だ。

 ジェロニモス修道院はポルトガルが栄華を極めた大航海時代に建立された建物で、世界遺産にも登録されている。そこで作られていたパステル・デ・ナタのレシピをある商人が買い取り、パスティス・デ・ベレンの創業者に売ったのが、絶品スイーツ誕生の始まりだという。

【参考記事】イラン「開国」で訪れるべきはここ!

 現在、門外不出の極秘レシピを知っているのは同店の3人のシェフだけ。その1人であるカルロス・マルチンスは10年ほど前、60年間レシピを守り続けてきた先代の後を継ぐ形でこの大役を任された。店のオーナーから「秘伝のレシピを受け継ぐ3人の1人に選ばれたと告げられた。すごくうれしかった」と、14歳から同店で修業を積んできたマルチンスは言う。

 彼は毎朝、「極秘」と書かれた金属製のドアの奥にある一室に入っていく。そこで他の選ばれし2人のシェフと共に、その日販売するパステル・デ・ナタ2万個分の生地とカスタードクリームを作るのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中