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新冷戦

東欧でのNATO軍事演習にプーチンは?

2016年6月23日(木)17時31分
ルーク・コフィー

 ロシアは今、バルト3国にさまざまな積極工作を仕掛けている。メディアを通じた世論操作もその1つだ。ロシア政府の支援を受けたロシア語メディアがロシア系住民やロシア語を話す住民に向けて日々、ロシア寄りのメッセージを流している。

 ロシアマネーの影響も見逃せない。キプロスの金融危機以降、ロシアの特権階級や犯罪組織がラトビアに資金を逃避させるようになった。ロシアマネーが流入すれば、ロシアの影響力が強まるのは必然の成り行きだ。

 目に見えない工作に加え、あからさまな軍事的恫喝も辞さない。ここ2、3年、ロシア軍機がエストニアなど周辺国の領空をたびたび侵犯、最近ではバルト海の公海上で訓練中の米駆逐艦にロシアの戦闘爆撃機が異常接近するなど挑発的な行為を繰り返している。

 こうした脅威に対し、NATOにはロシアと国境を接する加盟国を守る準備ができているだろうか。

挑発にはあらゆる抵抗手段

 プーチンは旧ソ連時代の戦略である積極工作を復活させ、帝国主義的な拡大プランに巧妙に組み込んできた。バルト3国はじわじわと着実にロシアの影響下に絡めとられつつある。ウクライナとクリミアの場合は、ソフトな介入にとどまらず、軍事介入にまでつながった。拡張主義の政策はプーチンにとってはただの「常識」かもしれないが、NATOの存在意義は、加盟国が帝国主義的な野望の標的になったときに集団で防衛することにほかならない。

 だからこそアナコンダが必要だ。ロシア政府はこの演習はロシアとNATOの緊張を高めるものだと批判する。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、ロシアはNATO加盟国に対して何の脅威も及ぼしていない、だからこの演習は正当化できない、と語り、こう付け加えた。「ロシアの安全と主権を守るため、挑発に対してはあらゆる手段を用いて対抗する」

 NATOの抑止力が効果的であるためには、ひとたび攻撃を受ければ同等以上の軍事力で対抗するという信用を保つことが欠かせない。

 アメリカが同盟国の安全保障に責任を持つことを信じてもらえなくなれば、ロシアの侵略に道を開くことになる。

This article first appeared on the Daily Signal.
Luke Coffey is director of the Allison Center for Foreign Policy Studies at The Heritage Foundation.

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