最新記事

音楽

「ロックもラップもいずれ死ぬ」

2016年5月27日(金)17時00分

――最近あなたは、「ラップが死ぬのが待ち遠しい」と発言して物議を醸した。

 悪意はなかった。もちろん死んでほしくなんかない。でも、いつかはロックも、ラップも死ぬ。ドゥーワップは死んだ。チャック・ベリーみたいな音楽もなくなった。フォークロックも死んだ。すべては過去のものになる。音楽が永遠に続くというのは幻想だ。

【参考記事】デビッド・ボウイ、最後のアルバムに刻んだ死にざま

 ロックは死んだと言ったときも批判されたが、取り消すつもりはない。58~88年はエルビス、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ジミ・ヘンドリックス、クイーンがいた。でも、88年以降に新しいビートルズはいたか? ワン・ダイレクションみたいなボーイバンドはいるし、(ジャスティン・)ビーバーやビヨンセなんかのポップ音楽も元気だ。でも、ビートルズとはレベルが違う。

――ロックの殿堂をめぐる議論も起こした。

(今年ロックの殿堂入りを果たした)N.W.A.は偉大なヒップホップ・グループだ。卓越している。でもロックじゃない。(初期のメンバーで著名プロデューサーの)ドクター・ドレーに「N.W.A.はどんなグループですか」と聞いたら、「ロックバンドだ」とは答えないだろう? キッスが「オレたちはヒップホップ・バンドだ」と言わないのと同じだ。

――ロックもヒップホップも死んだら音楽はどうなるのか。

 すべてのものは進化しなければ、消滅する。ポップ音楽は驚異的だ。(セリーヌ・ディオンからケイティ・ペリーまでヒット作を量産してきたプロデューサーの)マックス・マーティンなんかは本当にすごい。レディー・ガガも大変な音楽的才能の持ち主だ。彼女は現代のジャニス・ジョプリンになれる。

 でも、ジェニファー・ロペスやビヨンセのライブは、半分以上が事前に録音されている。そんなのいんちきだ。

 食品だったら砂糖が50%といった成分表示がある。コンサートも「チケットの代金は150ドルです。音楽の50%以上は生演奏ではありません」と断るべきだろう。ファンに敬意を払うなら、最低限そのくらいの誠意を示すべきだ。

 だから私はEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)が好きだ。生演奏のフリをしないからね。DJがボタンを押すだけだ。レーザー光線が飛び交い、みんな踊って楽しむ。嘘がなくて最高じゃないか。ポップ音楽はすごいが、それはプロデューサーたちのおかげで、アーティストは口パクやダンスでごまかしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ

ビジネス

日経平均は反発、円安を好感 半導体株高も支え

ビジネス

村田製作所、マイクロ一次電池事業をマクセルに80億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中