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インタビュー

ウェルビーイングでワークスタイルの質を高める

[石川善樹]予防医学研究者

2016年5月26日(木)11時03分
WORKSIGHT

ネガティブ要素を「ワクワク」に変える環境作り

 快適に働ける環境をいかに作るか。あるいは、オフィスワーカーのどんな行動がストレスの軽減や生産性の向上につながるか。健康と働き方を結び付けるウェルビーイング* の考えが企業やワーカーの間で広がってきています。

 僕の専門は予防医学で、心身の健康を増進して病気を未然に防ぐことを研究しています。多くの人が長時間をオフィスで過ごす中、オフィスワーカーのウェルビーイングをどう考えるかということは予防医学の大きなテーマといえます。

幸福の要素は「快楽」「意味」「没頭」の3つ

 心身の充実は幸福の度合いと関連があるわけですが、幸福の要素は「快楽」「意味」「没頭」の3つあると言われています**。「快楽」は肉体的・感覚的に得られる短期的な幸せで、「意味」は楽しくなくてもそこに意義が感じられれば幸せというものです。

【参考記事】脳を健康にするという「地中海食」は本当に効果があるか

 古代ギリシャにさかのぼれば、幸せといえば「快楽」か「意味」のどちらかでしたが、20世紀になってミハイ・チクセントミハイ(ポジティブ心理学の研究者)が、フローやゾーンといった概念を通して「没頭」の幸せを指摘したんです。「没頭」は何かにのめり込むことで得られる幸せで、別に快楽も意味もなくていい。登山やジョギングなど、その行為に没入できることの幸せを指します。

 何に幸せを感じるかは人によって異なりますし、国民性もあります。アメリカ人は没頭タイプです。本質を突きつめたいんですね。だからオフィスでは没頭しやすい個室が重要になってくるんです。日本人は意味を重視します。自分がしていることに意義が感じられれば、それなりに幸せなんです。第三世界では快楽を求める人がまだまだ多かったりします。

【参考記事】個人の身の丈に合った「ナリワイ」で仕事と生活を充実させる

ワクワクとともに目覚め、満ち足りた気持ちで眠りにつく

「快楽」「没頭」「意味」という幸福の3要素をさらに拡張して生まれたのがウェルビーイングです。ウェルビーイングを測定する構成要素は、次の5つとされています。

・Positive Emotion(ポジティブな感情)
・Engagement(エンゲージメント、没頭)
・Relationship(ポジティブな人間関係)
・Meaning and Purpose(意味や目的)
・Achievement(達成)

「ポジティブな感情」は幸福感や満足度、「ポジティブな人間関係」は他者との友好的な関係、「達成」は目的に到達することそのものの幸福です。これらは頭文字を取ってPERMAと呼ばれます。

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