最新記事

オピニオン

ドナルド・トランプの不介入主義は正しい

2016年5月20日(金)19時52分
ダグ・バンドウ(米ケイトー研究所シニアフェロー)

Rick Wilking-REUTERS

<共和党保守派やネオコンとは一線を画すドナルド・トランプの外交政策は、大統領選本選でも強みになる。軍事介入を建策しては失敗の山を築いてきた従来の外交エリートも用済みだ>写真は退役軍人のための集会に出席したトランプ(1月)

 米共和党の大統領候補指名をほぼ確実にしたドナルド・トランプは、史上最も攻撃的な候補者だ。

 本気で論争すれば負けそうな主張もあるが、強みになりそうなのは外交政策だ。近年のアメリカ外交はことごとく失敗に終わり、世論も中東への更なる軍事介入を支持していない。

【参考記事】シリア内戦終結を目指す地雷だらけの和平協議
【参考記事】シリア軍事介入の理想と現実

 トランプは、ネオコン(新保守主義者)や軍事介入を支持する共和党主流派と一線を画している。外交に関する演説では、外交政策そのものより政策顧問の人事に焦点を置いていた。

「世代を超えて持続可能な外交政策を確立する。目標達成のために私が求めているのは、優れた政策や実践的なアイデアを出せる有能な専門家だ。完璧なのは経歴だけで、長年失敗ばかりを繰り返し、戦争で被害しかもたらさなかったエリートの助言はいらない。外交にも新しい人材が必要だ」

 トランプの念頭には、共和党保守派の有力者ら117名で作る「共和党国家安全保障コミュニティ」が3月に発表した連名書簡があったのかもしれない。トランプを「不誠実」、「ペテン師」、「憎悪に満ちている」、「一貫性がない」などとこき下ろしていた。

 あるいは、トランプが排除しようとしている既存の外交エリートたちが、トランプ政権入りへの意欲を示しているとメディアから伝え聞いたのかもしれない。ある共和党の関係者はワシントン・ポストの取材に対し、「(トランプが大統領になっても)完全に孤立させて良い助言を与えないのは無責任だ」と、恩着せがましく語った。

過去の過ちから学べ

 外交政策の基本は、アメリカの国益を守ること。特権や輝かしいキャリアに目がくらんでいるだけのエリートをトランプが必要としていないというのも道理だ。

 ジャーナリストのエバン・トーマスは、アメリカ外交にはエリートの頭脳が欠かせないと言ってトランプを批判する。彼はトランプの真意を理解していないようだ。トランプは外交のために経験豊富な人材を活用すること自体に異論はない。

 トランプが不要だと言っているのは、失敗ばかりを繰り返し、アメリカにとって破滅的な結果を導いてきた「アドバイザー」たちだ。実際、イラク戦争をはじめとする軍事介入では、次々と新たな問題を生み出して、新たな軍事介入の必要に迫られてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイCPI、10月は前年比0.76%下落 7カ月連

ビジネス

日産、横浜本社ビルを970億円で売却 リースバック

ビジネス

カタール航空、香港キャセイ航空の全保有株売却 8.

ビジネス

米財務省、今後数四半期の入札規模据え置きへ 将来的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中