最新記事

欧州経済

EU財務相会合、パナマ文書問題への「過剰反応」慎重論相次ぐ

欧州委員会による大企業の税・財務データを一般公開する案について否定する声が多数

2016年4月25日(月)19時44分

4月23日、大企業や富裕層のタックスヘイブン(租税回避地)利用実態を暴く「パナマ文書」の流出問題をめぐり、同日の欧州連合(EU)財務相会合では、「過剰反応すべきでない」など規制強化への慎重論が相次いだ。写真はブリュッセルで20日撮影(2016年 ロイター/Francois Lenoir)

 大企業や富裕層のタックスヘイブン(租税回避地)利用実態を暴く「パナマ文書」の流出問題をめぐり、23日の欧州連合(EU)財務相会合では、「過剰反応すべきでない」など規制強化への慎重論が相次いだ。

 EUの執行機関、欧州委員会は4月12日、大企業の税・財務データの一般公開を義務付ける案を発表。タックスヘイブンでの活動に関する情報も開示させ、多国籍企業の税金に関する透明性を高めるとした。

 これに対して企業側からは、データを一般公開すれば、誤解による風評被害が起こる可能性を懸念する声が上がっている。またEUの企業団体は、EU以外の企業がEUの競合他社に関する情報を入手すれば、EU企業の競争力が損なわれる可能性がある、と警戒感を示している。

 ドイツのショイブレ財務相は、EU会合後の記者会見で、欧州委員会の計画の実効性を疑問視。「世論に責め立てられることを心配する必要がない場合は、情報開示がしやすくなる」とし、データや情報の開示先は税務当局に限定すべきと主張、一般公開に否定的な見方を示した。

 マルタのシクルーナ財務相はパナマ文書に「過剰反応すべきではない」とし、規制を強化し過ぎればEU企業の競争力が低下するリスクがあると警告。「(企業の税務データを)一般公開するのではなく、税当局にのみ公開することが、最初のステップとして望ましい」と述べた。

 

[アムステルダム 23日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中