最新記事

亡命

集団脱北の衝撃、アジア各国の北朝鮮レストランが窮地に

困窮する北朝鮮にとって数少ない外貨の稼ぎ頭も閉店の危機

2016年4月18日(月)11時13分

4月14日、アジアに展開する一部の北朝鮮レストランは閉店に追い込まれている。北京の北朝鮮レストランで12日撮影(2016年 ロイター/Damir Sagolj)

 インドネシア首都ジャカルタにある北朝鮮の国営レストランでは、今週に入り、いつもウエートレスが行っていた歌や踊りのパフォーマンスが中止された。客が10人にも満たなかったからだ。

 アジアに展開する一部の北朝鮮レストランは閉店に追い込まれている。需要が低迷し、北朝鮮の国と同じく、レストランも危機のさなかにあるように見える。従業員たちは多くの質問を向けられることに、疑念を抱いている。

 北朝鮮は国外にレストラン約130店舗をもち、従業員や運営者は同国から派遣される。レストランの大半は、売り上げを北朝鮮政府に送る。多くは中国にあるが、インドネシア、タイ、カンボジア、ベトナム、中東にも存在する。

 北朝鮮赤十字会によれば、中国浙江省の寧波市にあるレストランから先週、従業員13人が韓国に脱北した。韓国は13人が脱北する前にどこにいたのかについて明らかにしていないが、複数のメディアは、東南アジアの国を経由して韓国に入ったと報じている。

 北朝鮮は、韓国の情報員による「忌まわしい」拉致だと非難している。

 このような北朝鮮の国外レストランは、制裁下にあり困窮する同国にとって、外貨を稼げる数少ない手段の一つとなっており、韓国の試算によると、年間約1000万ドル(約10億9500万円)を売り上げている。

 北朝鮮が最近実施した核実験やミサイル実験に対して国連が先月、新たな制裁を発表して以来、レストラン自体は対象に含まれてはいないものの、一部は窮地に陥っていたとみられる。韓国は先月、自国民に対し、北朝鮮の海外レストランに行かないよう奨励していた。

 寧波にあるレストランの営業成績も芳しくなく、一部住民の話では、数カ月前から改装のため閉店していたという。ジャカルタに2店舗ある北朝鮮レストランの1つも同様に営業しておらず、タイ首都バンコクにあるレストランでも、やはり改装のため4月20日まで閉店するとの張り紙があった。

 今も営業しているもう1つのジャカルタにあるレストランは、オフィスや銀行、他の飲食店でにぎわう市北部のクラパ・ガディン地区に位置する。

 客がカメラを取り出すと、ピンクと黒色の制服を着たウエートレスは「写真はだめ」と語った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中