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集団脱北の衝撃、アジア各国の北朝鮮レストランが窮地に

2016年4月18日(月)11時13分

 テーブルは木製のつい立てで仕切られており、客は互いに見えないようになっている。だがロイターが訪れたときは、客はほとんど見られなかった。おなじみの歌と踊りのパフォーマンスの代わりに、北朝鮮のコンサートが韓国製テレビに映し出されていた。

 限られたインドネシア語しか話さないウエートレスは、ほとんどの質問に答えなかった。しかし、レストランのオーナーは誰かと尋ねると、ウエートレスの一人は「北朝鮮市民全員だ」と答えた。それは政府を意味するのかと聞くと、彼女はうなずいた。

北京はまだまし

 かつては「平壌綾羅島」という名だった北京にあるレストラン「品三国」は、まだましなように見える。メインの部屋には20のテーブルがあるが、平日の夜に半分は埋まっていた。ディナータイムには、短い歌と踊りのパフォーマンスも行われていた。だが、小さな部屋は空いていた。

 2人で北朝鮮のビールを飲み、キムチと焼き肉を食べ、450元(約7600円)だった。これは北京の水準から考えても割高である。

 にもかかわらず、ウエートレスにもうかっているかと尋ねると、「それほどでもない」と答えた。

 国外の北朝鮮レストランで働くウエートレスの多くは、平壌の大学で調理、歌や踊り、楽器演奏を学んだ人たちから選ばれる。選考するうえで、政府への忠誠心が大きな要素となる。

 国外のレストランで働くことになると、現地の人と交わらないように言われ、集団生活し、治安当局者から監視を受ける。

 ジャカルタにある「平壌レストラン」は3階に分かれており、客は最上階には立ち入れないようになっている。

 約半年前まで中国の寧波にある北朝鮮レストランに関わっていたという中国人ビジネスマンによると、従業員たちは寮に住み、食べ物を支給されていたという。

 北京のレストランでは、テーブルに炭を運ぶ男性と、部屋の片隅から目を光らせているレザージャケットを着た男性以外は、従業員は皆女性だった。

 (Eveline Danubrata記者、Damir Sagolj記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

  

[ジャカルタ/北京 14日 ロイター]


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