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2000億ドルもの中国マネーがアメリカに消えた?

2016年4月1日(金)13時50分
譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)

 無論、これは少しでも疑わしい資金は受け入れたくないという大手銀行の警戒心によるものだ。しかし正当な顧客であっても、質問にスムースに答えられなかったり、要求された大量の書類に不足があったりすると口座開設は難しく、はなはだしい例では、住宅を購入しようとする顧客に対して「住宅を取得した証明書」を提出せよと求めるという。そもそも住宅を購入するには先ず銀行口座がなければならないのだから、これでは「鶏と卵」論争のようで、バカバカしいことこの上ない。

 こうした縮小傾向にもかかわらず、中国人観光客の口座開設が相次いでいるのはなぜなのか。その実態とはどんなものだろうか。

パスポートとクレジットカードだけでOKな華僑系銀行

 米国の中国語サイト博訊網(2月27日付)によれば、シカゴのチャイナタウンにある複数の銀行では、ソーシャル・セキュリティー・ナンバーも居住証明もいらず、ただ有効な中国のパスポートさえ持参すれば、その場で簡単に銀行口座が開設されるという。そのため、連日、中国からの観光客が詰めかけて、新規の口座開設数がここ半年ほどで約3倍に急増した。

 銀行によって提示するものは多少異なるが、例えばキャセイバンク(国泰銀行)の場合、有効な中国のパスポートとクレジットカードの2点を提示するだけで銀行口座が開設できる。また渡米前でも、キャセイバンクがコルレス契約(為替取引契約)を結んでいる中国の蘇州銀行へ行けば、アメリカ国内の銀行口座を開設することができるという。

 別の銀行では、中国のパスポートと運転免許証だけで済むところや、中国のパスポート以外にアメリカの居住証明が必要だと告示してあっても、その実、居住証明は「有効」でありさえすれば、友人や知人の名義でも構わないところがある。銀行によっては、特に宣伝をしたわけでもないのに顧客数が2~3倍に膨れ上がり、首を傾げているという。

 ちなみに、シカゴのチャイナタウンにはキャセイバンクのほかにも、アメリカン・メトロバンク、チャーターワンバンク、シティバンク、インターナショナルバンク、レイクサイドバンク、パシフィック・グローバルバンクと、7つもの銀行がひしめいている。日本ではあまり馴染みのない銀行が多いが、これは吸収合併を繰り返す大手銀行や中規模銀行、地域銀行(地銀)が少なくないからである。そして地銀の中には華僑系銀行も少なくない。

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