最新記事

金融政策

G20閉幕、日米間で為替めぐり温度差ある一方、消費税増税延期にお墨付き

「パナマ文書」問題に関し、課税逃れ対策に協力しない国・地域には制裁検討も

2016年4月16日(土)20時15分

4月16日、米ワシントンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が15日(日本時間16日)閉幕し、前回2月の上海会合同様に、各国が財政・金融・成長戦略をフル出動し停滞しつつある世界経済の成長を確保するとの共同声明を採択した。(2016年 ロイター/Kevin Lamarque)

 米ワシントンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が15日(日本時間16日)閉幕し、前回2月の上海会合同様に、各国が財政・金融・成長戦略をフル出動し停滞しつつある世界経済の成長を確保するとの共同声明を採択した。

 焦点の為替では、競争的な切り下げをしないとの総論で一致したものの、ルー米財務長官が日本に対して切り下げでクギをさすなど、日米の温度差が浮き彫りとなった。

 また、ルー財務長官は日本は慎重な増税が必要と明言。安倍晋三政権としては消費増税延期のお墨付きを確保した格好だ。

 タックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴いた「パナマ文書」を踏まえ、課税逃れ対策に協力しない国・地域には制裁検討も辞さない姿勢を打ち出した。声明は、非居住者の金融口座情報を交換する枠組みに加わっていない国・地域に参加を求めた。

 為替に関して声明は、「為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済・金融の安定に悪影響を与え得る」「通貨の競争的切り下げを回避する」として、従来のG20声明と同じ表現が記された。

「為替が物価にマイナスならちゅうちょなく追加緩和」と黒田日銀総裁

 日本側の焦点は、過度な円高進行時に1)為替介入が認められるか、2)日銀の追加緩和に理解が得られるか──だった。日本側は、競争的な切り下げに金融政策は含まれないと確認したとしている。日銀の黒田東彦総裁は「金融政策は物価の安定を実現するとの国内の政策目的のため」とし、「マイナス金利政策を含めて各国の金融政策運営が制約されることはない」と明言。「為替市場を含め、市場を十分注視し、2%の物価目標達成にマイナスになることがあればちゅうちょなく追加的な措置を取る」と踏み込んだ。

「円高無秩序でない」「日本は切り下げ回避を」とルー米財務長官

 麻生太郎財務相は、急激な円高進行について「一方的に偏った動きに強い懸念」を示し、「過度の為替変動に対しては、今回の共同声明に沿い、適切な行動を取る」「為替市場の動きが急すぎる点についてはルー米財務長官と意見が一致した」などと記者団に話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソニーG、9月30日時点の株主に株式5分割 上限2

ビジネス

ソニーGの今期、5.5%の営業増益見通し 市場予想

ワールド

社会保険料負担の検討、NISA口座内所得は対象外=

ワールド

米、中国関連企業に土地売却命令 ICBM格納施設に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中