最新記事

自動車

タカタ製エアバッグのリコール、「ハンバーガー」不足で進まず

交換が必要なエアバッグは様々な種類に分かれ、合計5000万個以上にのぼる

2016年3月12日(土)12時54分

3月11日、リコールが増え続けるタカタ製エアバッグ部品は今も交換用の供給が間に合っていない。その理由の1つが業界内で「ハンバーガー」などと呼ばれるインフレーターのメーカーによる設計の違いだ。写真はタカタのロゴ、都内で2015年11月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

 リコール(回収・無償修理)が増え続けるタカタ<7312.T>製エアバッグ部品は今も交換用の供給が間に合っていない。その理由の1つが業界内で「ハンバーガー」などと呼ばれるインフレーター(ガス発生装置)のメーカーによる設計の違いだ。

 交換品の生産を引き受けるスウェーデンのオートリブでは、自社製をタカタ製の仕様に合わせる修正作業に時間がかかっている。

慢性的な交換品不足

 タカタ製エアバッグの異常破裂による死亡者は、日本ではまだ出ていないが、米国を中心に海外で計10人、負傷者も世界で100人を超える。日米欧の主要自動車メーカー10数社がリコールを実施しており、その累計はインフレーターにして5000万個以上。部品交換の時期が車の所有者によって違うため、一気に全てが交換されるわけではないが、その規模はタカタの年間インフレーター販売量を超えるとみられる。

 交換用の生産は、タカタのほか、ダイセル<4202.T>、オートリブ、米ZF―TRWなどが手掛けるが、慢性的な不足が続いている。

 事態に追い打ちをかけるかのように、米当局はタカタに対し、異常破裂の一因とみている火薬原料の硝酸アンモニウムを使うインフレーターの製造販売を2018年末までに段階的に中止するよう要請。自動車各社は開発・生産中の車も含めて硝酸アンモニウム以外を使う他社製品の採用に動き出している。同業他社は、この新規受注にも対応する必要があるため、交換部品の生産はさらに圧迫されそうだ。

 エアバッグ業界の米調査会社バリエント・マーケット・リサーチによれば、昨年来、各社は交換用インフレーターの生産能力を拡大しているが、タカタを除く業界全体で今年半ばには月約500万個生産しなければ追いつかなくなる。

「ハンバーガー」と「ホットドッグ」

 エアバッグは車種によっては1台に10個も搭載され、インフレーターの種類はエアバッグの取り付け位置によって異なる。形状別では、大きく分けてディスク型と筒状に分類される。

 ディスク型が使われるのは主に運転席・助手席用で、形状がハンバーガーを包む箱に似ていることから「ハンバーガー」と呼ばれる。直径10センチほどだが、大きさやガス発生剤の量は車種によって変わる。一方、筒状が使われる後部座席やサイド、膝用などは「ホットドッグ」と呼ばれる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米移民収容施設「ワニのアルカトラズ」、地裁が増設を

ビジネス

エヌビディアCEO、TSMC訪問 中国向け新型半導

ワールド

再送トランプ政権、米投資拡大する企業の株式取得は考

ワールド

トランプ氏、DOGE後継組織設立か エアビー共同創
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 2
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精神病」だと気づいた「驚きのきっかけ」とは?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 6
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 7
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 8
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 9
    米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中