最新記事

感染症

小頭症の新生児が急増、ブラジル襲うジカ熱の脅威

感染流行の震源地ペルナンブーコ州では、数カ月間で1000を超える小頭症が報告された

2016年2月1日(月)11時19分

1月27日、蚊が媒介する「ジカ熱」感染流行の震源地となったブラジルのペルナンブーコ州では、わずか数カ月間で1000を超える小頭症を抱える新生児の症例が報告された。写真は25日、小頭症を患う娘のマリア・ジョバンナちゃんを抱くグリーゼ・ケリー・ダ・シルバさん。ブラジルのレシフェで撮影(2016年 ロイター/Ueslei Marcelino)

 ブラジル北東部の小児科医アンジェラ・ロチャ氏が「小頭症」の子どもの頭部を計測している。小頭症は先天的な神経系の合併症で、現在アメリカ大陸で猛威を振るう「ジカ熱」ウイルスに関連して発症するとされている。

 診療室の外では、頭部が異常に小さい乳児を抱いた母親が7人、検査を受けるために何時間も並んで待っている。蚊が媒介するジカ熱感染流行の震源地となったペルナンブーコ州では、わずか数カ月間で1000を超える小頭症の症例が報告された。

 「不意を突かれて驚いた」と州都レシフェのオズワルド・クルス大学で感染症を長く研究しているロチャ医師は語る。そこでは医師が小頭症と診断された300人もの乳児の治療に奮闘している。

 驚いたで済ませるのは控えめすぎるだろう。

 ブラジルはこれまで長年にわたり、デング熱、黄熱などの熱帯病流行の原因となったネッタイシマカと闘ってきた。だが、ジカ熱の流行は政府、公衆衛生機関、そして医師のいずれにとっても完全に不意打ちだった。

 熱帯性気候、人口稠密な都市、劣悪な衛生状態、そしてずさんな建築は、蚊の発生源として、そしてジカ熱ウイルスの蔓延にとっても理想的な条件を備えている。ブラジル北東部から始まったジカ熱の流行は瞬く間に全土に広まり、さらに米州20カ国以上で猛威を振るっている。

 「蚊やウイルスを止めるのに必要な条件や情報が欠けていた」と、隣接するバイーア州の疫学者で、公衆衛生のプロの集まりであるブラジル公衆衛生保健協会のマリア・ダ・グロリア・テイシェイラ理事はこう指摘する。

 政府や国際保険機関らが警鐘を鳴らすなか、ブラジルでは、少なくとも感染拡大が沈静化するか、この先何年かかるか分からないがワクチンが開発されるまでは、妊婦が蚊に刺されないよう対策を取り始めている。

 ブラジル保健省は今週、米国立衛生研究所とワクチン開発協力に関する合意を締結する見通しと発表した。南米では、女性にしばらく妊娠を控えるよう呼びかける国も出てきている。

圧倒

 因果関係はまだ証明されていないものの、科学者は、妊娠中にジカ熱に感染したと思われる母親と小頭症の子どもとのあいだに臨床的な関連を見出している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シカゴ連銀発表の米小売売上高、9月は+0.5% 前

ビジネス

米BofAの7─9月期は増益、投資銀行業務好調で予

ワールド

米韓通商協議に「有意義な進展」、APEC首脳会議前

ワールド

トランプ氏、習氏と会談の用意 中国「混乱の元凶」望
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中