最新記事

ISIS

空爆で収入減のISISが次に狙うのは為替操作?

有志連合はISISの戦闘員や指導者に加え、同組織の金融インフラも攻撃の対象に

2016年2月25日(木)11時02分

2月22日、イラク北部モスルを支配する過激派組織「イスラム国」戦闘員は、金融拠点に有志連合の爆撃機から攻撃を受けるなか、住民から金を搾り取るため米ドルとイラク・ディナールの為替レートを操作している。写真は同組織の戦闘員。モスルで2014年6月撮影(2016年 ロイター)

 イラク北部モスルを支配する過激派組織「イスラム国」戦闘員は、金融拠点に有志連合の爆撃機から攻撃を受けるなか、住民から金を搾り取るため米ドルとイラク・ディナールの為替レートを操作している。

 米主導の有志連合は、イスラム国の戦闘員や指導者への攻撃に加え、同組織の金融インフラも攻撃の対象だとしている。

 有志連合の空爆により、イスラム国の主要な収入源となっている石油の生産能力は減少。同組織はすでに世界的な原油相場の下落に苦しんでいる。有志連合は昨年10月以降、何億ドルもの現金が保管されていたとみられる、少なくとも10カ所の「現金回収ポイント」を破壊したとしている。

 イスラム国戦闘員の給料が最大で半減しているとの報告は、有志連合が同組織にプレッシャーを与えていることの証左だと複数の米軍当局者は語る。

 平均的は月収は、400ドル(約4万5000円)から200ドルに削減された。これまで600─800ドルだった外国人戦闘員の給料もカットされたが、どの程度かは不明だと、有志連合の報道官を務める米軍のウォーレン大佐は述べた。

 しかしながら、現地の経済をほぼ完全に支配するイスラム国の戦闘員たちは、新たな収入源を導入することで、モスルでのそのような後退に適応しているように見える。

 モスルの為替トレーダーたちがロイターに語ったところによると、イスラム国は支配下の工場で生産した主要な商品を現地の販売業者に売ることでドルを稼ぎ、多くの戦闘員や公務員にはディナールで給料を払っているという。

 先月にイスラム国が設定した為替レートは、小額のディナール紙幣に対してドル高となっており、同組織が最大20%の利益を得ていると、トレーダーたちは指摘する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中