最新記事

中東

エジプト政府の弾圧でムスリム同胞団が過激化

非暴力主義を貫く旧世代が求心力を失い、若手メンバーがISISに移る恐れも

2015年9月1日(火)06時30分
ジャニーン・ディジョバンニ、フレデリック・エリソン

最悪の人権侵害 今年6月、モルシらに下された死刑判決に対して抗議の声を上げる人々 Amr Abdallah Dalsh-REUTERS

 エジプトで「アラブの春」が起きて4年以上。反政府組織だったムスリム同胞団のムハンマド・モルシは民主化後、選挙で大統領の座に就いた。だが13年の軍による事実上のクーデターで排除され、今は死刑判決を受けた身だ。岐路に立つ同胞団は今後、どのような道を進むのか。

 シシ大統領率いるエジプトでは、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのジョー・ストークが「記憶するなかで最悪の人権侵害」と呼ぶ状況が続いている。特に同胞団への弾圧はひどく、モルシ失脚以来、多くのメンバーが逮捕や国外追放になった。トルコなどに逃げおおせたのはごく少数の幹部だけだ。

 昨年、同胞団の最高指導者モハメド・バディや、モルシ支持者682人が死刑を言い渡された裁判はわずか8分で結審。そんな「政治裁判」で、モルシも今年6月に死刑を言い渡された。

 だが同胞団の支持者は、挑戦的な姿勢を続ける。シシ政権下で収監され、今はトルコ在住の同胞団の元活動家ムスタファ・エル・ネムルは人々の反撃を予想する。「シシに恨みを抱く人々を抑え込むことは、不可能に近い」

 同胞団は数十年にわたり、非合法組織として政府に抑圧されてきた。それゆえ結束は固い。「入団には厳しい手続きがある」と、ブルッキングズ研究所のシャディ・ハミドは言う。入団希望者は5~8年かけて教義をたたき込まれ、徐々に正式なメンバーとして認められる。

 ワシントン中近東政策研究所のエリック・トラガーによれば、同胞団は「厳格な方法で個人をイスラム化させ、それを家族や社会、国家、ひいては世界に広げようとしている」。

 同胞団が人々を引き付ける理由の1つが、政治的イスラムと社会福祉事業の融合だ。彼らは70年代に公に暴力を否定し、

 教育活動やスポーツ施設の運営などで大衆の支持を得てきた。この方式をセネガルからロシアまで多くの国で実践。ハミドの推計ではエジプトには現在50万人ほどのメンバーがおり、多くは毎月収入の約15%を寄付する。

暴力否定派と暴力容認派

 シシ政権の弾圧は同胞団を壊滅させることはないが、組織を根本的に変えるだろう。内部では長年、非暴力を貫くグループと、状況によっては暴力を容認するグループが対立している。多くの幹部が逮捕や国外追放でいなくなった結果、世代交代が起きたとハミドは指摘する。「エジプトにいる若いメンバーが主導せざるを得なくなった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポルトガル、第1四半期は経済活動縮小 嵐で経済損失

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、3月速報値は成長ほぼ停滞 中東

ビジネス

ドイツ総合PMI、3月速報値は3カ月ぶり低水準 サ

ビジネス

ドイツ企業、海外事業をさらに悲観視 イラン戦争前=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 4
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 5
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 6
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 7
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 8
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 9
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 10
    イラン戦争、トランプを泥沼に引きずり込む「5つの罠…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中