最新記事

デモ

スペイン「言論統制法」のゴリ押し

無許可のデモを禁止するという内容の公安法が発効。政府の真意はどこに

2015年8月6日(木)17時30分
フェリシティ・ケーポン

自由の侵害 発効前夜には大勢の人が議会の前で抗議デモを展開 Juan Medina-REUTERS

 スペインで先週、新たな公安法が発効した。デモを行う権利を規制する内容であるため、反対派は「言論統制法」と強く非難。発効前日には、国内30都市以上で抗議デモが展開された。

 新たな法律の下では、交通の要所や原子力発電所など重要施設の近くで無許可のデモを行った者は、1人最大60万ユーロの罰金が科せられる可能性がある。議会周辺での無許可集会も禁止となり、住宅街でデモを行うなどして公共の秩序を乱した場合には最高3万ユーロの罰金が命じられることになる。

 無断で警察画像を配信したジャーナリストや報道機関、警察官を侮辱した者などは罰金600ユーロの可能性がある。公安法はさらに、アフリカ北部にあるスペインの飛び地領、セウタとメリリャにやって来た移民を国外退去させる権限を当局に与えている。

 マドリード報道協会はこの新法について、ジャーナリズム活動における「自由を損ねる」ものだと批判。スペインの主な警察組合も声明を出し、「今は最適な時期ではない。スペインは社会、政治、経済における変革の時代を迎えており、必要な政治的・社会的総意のないまま法律が施行されれば、変革はより困難になる」とした。

 野党第1党の社会労働党は、今年11月の総選挙で自分たちが勝利すればこの公安法を撤回する、と明言している。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのガウリ・バングリ副部長(欧州担当)は本誌に対して、「多くの人がやりたいこと、やる権利があることを実行するのを恐れる......この法律の恐ろしい影響を懸念する」と語った。

 それでもスペイン政府は、新法を繰り返し擁護している。フェルナンデス内相は「困るのは暴力的な人だけだ」と発言。ラホイ首相も、基本的人権を制限するのではなく、「より自由な行使を実現する」ためのものだと語っている。

[2015年7月14日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは143円前半へ急反落、日米財務相会

ビジネス

バランスシート縮小「焦る必要ない」、市場荒らさない

ワールド

米首都で銃撃、イスラエル大使館員2人死亡 容疑者1

ビジネス

JPモルガンCEO、米スタグフレーションリスクを警
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 2
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 3
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 4
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 5
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 6
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    子育て世帯の年収平均値は、地域によってここまで違う
  • 9
    トランプは日本を簡単な交渉相手だと思っているが...…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「自動車の生産台数」が多い…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 5
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 6
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 9
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 10
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中