最新記事

南シナ海

焦点:「中国脅威論」高まるフィリピン、基地増強に世論後押し

かつて基地増強に反対していた住民も、今では同盟国の軍艦到着を心待ちに

2015年5月15日(金)18時04分

5月14日、フィリピンのパラワン島にあるウルガン湾周辺の住民はかつて、湾の奥に位置する海軍基地の増強に反対していたが、「中国脅威論」を背景に今では賛成が大勢だという。写真は4月、ウルガン湾で合同演習するフィリピン軍と米軍の兵士(2015年 ロイター/Romeo Ranoco)

[ウルガン湾(フィリピン) 15日 ロイター] - フィリピンのパラワン島にある風光明媚なウルガン湾。同地の住民はかつて、湾の奥に位置する海軍基地の増強に反対していたが、今では米国や外国の軍艦が到着するのを心待ちにしている。背景にあるのは、中国による南シナ海への進出だ。

中国は現在、フィリピンなどと領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で人工島の建設を加速させている。一方、フィリピンは東南アジアで最も海軍力が弱い国の1つであり、国民の間では中国に対する警戒感が強まっている。

フィリピン側の懸念が最も明確に見て取れる場所がウルガン湾だ。湾があるパラワン島は南シナ海に面する長い海岸線を持ち、スプラトリー諸島からは160キロの場所にある。

湾を囲むように点在する町の1つ、マカラスカスの有力者ジェーン・ビラリン氏は「以前は南シナ海についてはそれほど懸念していなかったが、今は緊張を感じる」とコメント。「この問題のせいで、いつか中国がわれわれのコミュニティーにやって来るのではと恐れている」と語った。

フィリピン軍制服組トップのカターパン参謀総長は11日、海外メディアを同行させ、スプラトリー諸島のパグアサ島を訪問。その時にロイターの取材に対し、資金面での障害で遅れが生じているが、海軍基地の建設は軍の最優先事項だと明言した。

現在の計画は、ウルガン湾の内部に位置するオイスター湾の既存海軍施設を、5年以内にフリゲート艦が停泊できる本格的な基地に増強するというもの。

カターパン参謀総長はまた、米国や日本、オーストラリア、ベトナムの軍艦の寄港も歓迎すると語った。

湾は比較的浅いため、駆逐艦や空母を停泊させるのは難しそうだが、米海軍は基地で燃料や物資の補給をできるようになるかもしれない。

カターパン参謀総長によると、米政府はすでに、フィリピンの基地8カ所で米軍の兵士や航空機、艦船を巡回駐留できるよう要請しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心呼ばない訳
  • 4
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 7
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中