最新記事

文化

キム・ヨナ採点騒動と韓国「恨」の文化

「国民の妹」への納得のいかない評価に激しく反応する韓国人の特異な国民性はいかにして生まれたか

2014年2月25日(火)16時50分
ジェフリー・ケイン

いじめ? ヨナ自身は「いい演技をしたことに満足している」とコメントしているが Issei Kato-Reuters

 世界中がため息をついた。ソチ五輪の女子フィギュアスケートで、ロシアのアデリナ・ソトニコワが韓国のキム・ヨナを抑えて金メダルを獲得したことに、驚きと困惑が広がっている。その衝撃度がいかほどかは、試合を見た者なら分かるだろう。

 ロシア人とジャッジ以外には、韓国の「国民の妹」が見せた完璧な演技は、1度だけ着氷の乱れがあったソトニコワを上回って見えたはずだ。IOC(国際オリンピック委員会)はすでに韓国から抗議の手紙を受け取っており、採点に異議を申し立てるオンライン上の署名活動に約200万人がサインしたことを認めた。

 200万人の署名は、韓国人以外にも採点を疑問視している人が多くいることの表れだろう。しかし、韓国国民が抱いている感情はそんなものではない。

 ヨナが流した涙を見た韓国人たちの胸には、この国の伝統的な思考様式「恨(ハン)」が渦巻いている。恨とは不公正な状況下でのやり場のない悲しみや苦悩、受容といった複雑な感情を指す言葉。特異な文化であり、外国人には非常に理解しづらいものだ。

 韓国人のこの感情は非常に強力で、時には目まいや消化器系の不調という症状が現れることすらある。苦痛がもたらされる原因は、愛する者の死や悲惨な離婚などさまざまだ。

 ヨナは「国民みんなにとっての娘のような存在だ」と、韓国に関する著書『韓国:不可能な国』があるダニエル・テューダーは言う。「彼女が不正やいじめをされたということは、国全体が不正やいじめをされたということだと、韓国人は考える」

 たしかに韓国は経済成長とともに変わりつつあるが、いまだにこういう考え方をする人はいると彼は言う。「彼らにとって、今回の出来事は『大国にいじめられる韓国』という構図を思い起こさせる。だからこそ恨が呼び覚まされるのだろう」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、ドイツで派遣社員300人の契約終了 再雇用

ビジネス

円債残高を積み増し、ヘッジ外債は縮小継続へ=太陽生

ワールド

中国とインドネシア、地域の平和と安定維持望む=王毅

ビジネス

ユーロ圏経常収支、2月は調整後で黒字縮小 貿易黒字
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中