最新記事

野生動物

アルシャバブの資金源は象の命だった

ソマリアのイスラム武装組織が兵士に払う給金はアジアに象牙を売った金で賄われている

2013年10月3日(木)14時41分
ジョシュア・キーティング

摘発の現場 マレーシアに密輸される直前にケニアの港で押収された象牙 Joseph Okanga-Reuters

 ヒラリー・クリントン前米国務長官が先週、国連で象牙の密輸を取り締まる国際プログラム(8000万ドル規模)について発表したとき、象牙の密売がテロ組織の資金源になっていると言明した。

 英科学雑誌ニュー・サイエンティストはこの問題に関し、詳細な記事を掲載。象牙の密輸で懐を肥やしている組織として、ソマリアに拠点を置くイスラム武装勢力アルシャバブに注目した。アルシャバブは先日、ケニアの首都ナイロビの高級ショッピングモールを襲撃した組織だ。

 ニュー・サイエンティストは、米カリフォルニアに本部を置くNGO、エレファント・アクション・リーグ(EAL)のアンドレア・クロスタ代表に取材。クロスタは11〜12年にケニアで象の密猟を調べる覆面捜査チームの陣頭指揮をとっていた。彼が話を聞いた密猟者やブローカーの多くが、アルシャバブに売る割合が高まっていると語ったという。アルシャバブはそれをアジア市場に流し、大きな利益を得ているのだ。

 EALの報告書によれば、「アルシャバブが象牙の密売から得ている収入はざっと計算しても月20〜60万ドルに上る。約5000人の兵士に月の手当てとして300ドルを渡していくには150万ドルが必要だが、その財源の大きな部分を象牙に頼っている」。アルシャバブの収入の40%が象牙の密輸からだという試算もある。

 ウガンダの反政府勢力、神の抵抗軍(LRA)もまた、その財源を象牙の密輸に頼っていると言われる。活動家たちが自分たちの運動を対テロ政策に関連づけるときは注意が必要だが、この象牙の問題については確かな根拠があるようだ。

 先週にはジンバブエのワンゲ国立公園の水たまりにシアン化物が混入され、100頭近い象が象牙のために殺された。アジアでの需要の高まりを受け、象牙密輸の市場規模は70〜100億ドルに膨れ上がっている。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、人質遺体を新たに引き渡し 停戦合意履行巡る

ビジネス

米国株式市場=続伸、ダウ664ドル高 利下げ観測高

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、精彩欠く指標で米利下げ観測

ワールド

ウクライナ、和平合意へ前進の構え 米大統領「意見相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中