最新記事

中国

金ぴかビルの建設禁止で汚職はなくなる?

政府が豪華な政府ビルの建設を禁じたのは、無駄遣いを減らすだけでなく役人の綱紀を粛清するためだ

2013年10月3日(木)14時35分
ジョナサン・デハート

腐敗の象徴 豪華なシャンデリアのある政府関連ビルがあちこちに David Gray-Reuters

 中国における巨大な建築プロジェクトが世界の注目を集めている。6月末、四川省・成都に床面積が世界一の「新世紀環球中心」がオープン。7月20日には湖南省・長沙で、地上202階建ての世界一高いビル(838メートル)「天空都市」が着工した。

 ところが4日後、中国政府は政府と共産党の機関に対して今後5年間、新たな建物の建設を禁じると発表。公金が不正使用されやすい政府関連ビルを標的に、汚職追放の姿勢を見せたいようだ。天空都市も認可手続きに不備があるとして、地元当局から建設中止を命じられた。

 中国では「多くの都市で、シャンデリアがぶら下がる巨大な政府関連ビルが次々に現れている」とAP通信は報じている。「ほとんどは地元で一番目立つ建物で、市民の反感を買っている」と、中国社会科学院の政治研究員の劉山鷹(リウ・シャンイン)は指摘する。「維持費やビル内での飲み食いに、多額の政府資金が湯水のように使われている。これは汚職の1つだ」

 役人の腐敗に対する国民の不満に応えるため、習近平(シー・チーピン)国家主席は贅沢な行為を禁じ始めたというわけだ。しかし効果は限られると、英ノッティンガム大学のスティーブ・ツァン教授(中国研究)は言う。「厳しい対処で、短期間は汚職を食い止められる。だが長期的には、権力各部門を互いに抑制・均衡させるのが最良の方法だ」

 実際、汚職対策が進んだところで役人たちは不正が目立たないよう努力するだけだ。「(役人は)豪華レストランの代わりに会員制クラブで食事をし、農家を装ったサウナに行き、ミネラルウオーターのボトルに入れたマオタイ酒を飲み、安たばこの箱に入った高級たばこを吸う」と人民日報は書いている。

 これらの行動ほど批判されてはいないが、華美な政府関連ビルが官民格差のシンボルになっているのは確かだ。安徽省の豪華ビルは米国防総省より広く、江西省には4500万ドルの時計塔が設置されたビルもある。黒竜江省ハルビンにある国有製薬企業の本社は、フランスのベルサイユ宮殿を模している。

 もっともこうした贅沢なビルが、この国の抱える最大の問題ではない。「中国経済にとっては不動産バブル、シャドーバンキング(影の銀行)、国有企業による独占のほうがはるかに危険だ」と、ブルッキングズ研究所のチョン・リーは言う。

[2013年8月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(発表者側の修正)東京コアCPI、11月は+2

ビジネス

英自動車生産、10月は前年比23.8%減 ジャガー

ワールド

香港大規模火災の死者94人に、鎮火は28日夜の見通

ビジネス

小売販売額10月は前年比1.7%増、PCなど家電増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中