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記者が見たシリア無差別攻撃の現実

子供も病人も容赦なく標的に――非道な攻撃にさらされて暮らすシリア市民の知られざる日常

2013年9月2日(月)14時23分
アイマン・オグハンナ(ジャーナリスト)

小さな犠牲者 砲撃で重傷を負う子供も後を絶たない(アレッポ、13年2月) Hamid Khatib-Reuters

 突然、医師が耳を手で塞ぎ、私は手の震えが止まらなくなる。2人ともとっさに床にしゃがみ込む。取材中、町に砲弾が降り注いだ。

 シリア北部のイドリブ県の町カーンアソブルは、この国で続く戦いのせいで平穏な暮らしを奪われた町の1つだ。

 シリアが民主化デモを経て泥沼の内戦に沈み込むとともに、この一帯の岩山に新しい用途が見いだされた。地元住民と反政府勢力の戦闘員たちが地下を掘り、シリア軍の空爆と砲撃から身を守る避難場所を築いたのだ。

 しばらくして、サファフ医師が立ち上がる。医師の使命が待っている。町でけがをした人がいるかもしれない。

 救急車運転手のマフムードは、もうドアの外に出て行きかけている。砲撃の音が途切れなく続き、灰色の煙が立ち上り、被弾により岩が焼け焦げる臭いが空気を満たすなか、マフムードは救急車に急ぐ。救急車は後部のスライド式のドアを開けたまま、慌ただしく出発する。

「出動するときは、いつも死を覚悟している」と、マフムードは言う。「これは、いい死だ。そう、いい死なんだ。ほかの人を救うために、死と隣り合わせの場に向かうのだから」

 サファフ医師と私も車でその後を追う。砲弾で道に開いた穴を縫うようにして、着弾したと思われる地点を目指して車を走らせる。エブラ遺跡(古代の都市国家の遺跡)やイドリブ・ホテル、キャンプ場など、かつて多くの観光客を迎えていた場所を指し示す看板が過去をしのばせるが、長い戦いの間に道路標識は銃弾で穴だらけになり、さび付き始めている。

 やがて、道路沿いの干からびた草地の前で車が止まった。私はサファフ医師のほうを見た。

 医師は屈強な大男で、がっしりした肩に大きな手、スンニ派イスラム教徒特有の長いあごひげが特徴的だ。しかし子供の死を聞かされると、彼の優しい目はいつも涙でいっぱいになる。

狙い撃ちされる救急車

 この日も子供が1人死んだ。砲弾が着弾した近くで、私たちはその男の子を見た。名前はフセイン・サファフ。6歳だった。

 少年は中国製ピックアップトラックの荷台に寝かされていた。墓地に運ぶために、近所の人たちが乗せたのだ。頭蓋骨は割れ、その中は空っぽだった。そして、体は2つに引き裂かれていた。

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