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ロシア

第2次プーチン時代に隠れた「死角」

2012年3月5日(月)16時52分
オーエン・マシューズ(モスクワ支局長)

変わり始めた国民意識

 ひとことで言えば、軍の強化と勢力圏の拡大にこそロシアの未来があるというのが、プーチンの発想だ。そういう男がロシアに君臨する時代があと6年、あるいは12年続くと考えて、世界のロシア専門家たちが暗い気持ちになるのも無理はない。

 もしプーチンの野望に歯止めをかける要素があるとすれば、1つは、世界規模の景気の悪化と、それによるエネルギー相場のさらなる下落だろう。エネルギーの価格が下がればロシアの収入が減り、軍備の強化につぎ込める資金も縮小する。

 もう1つは、国民の意識だ。プーチンは昔のままでも、国民の意識は変わり始めている。

「国民は昔、プーチンを頼もしく、カリスマ性がある指導者だと感じていた」と、先頃モスクワ大学で行われたシンポジウムの参加者の1人であるビクトル・チトフは指摘した。

 しかし最近は、「プーチンが約束を破り、役人たち(の汚職)をコントロールできず、しかも一般国民の生活水準が悪化していることに、ロシアの人々は目をつぶらなくなった」。

 大国ロシアの再興というプーチンの野心は壮大だが、エネルギー価格の高騰による経済的な恩恵が消え始めた今、ロシアの国民はもっと単純で、しかし、もっと実行が難しいことを指導者に求めるようになった──例えば、汚職のない政府を。

[2012年1月 4日号掲載]

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