最新記事

エジプト

ムバラク後初の選挙に野党反発で流血か

軍が民衆への発砲を拒否し平和的に独裁政権を倒したエジプトで、軍と反体制派の対立が表面化。民主化の代わりに今度こそ暴力が吹き荒れる恐れがある

2011年9月30日(金)15時23分

革命半ば カイロで気勢を上げる反ムバラク・反軍派(9月24日) Amr Dalsh-Reuters

 エジプトでは、2月のムバラク政権崩壊後初の人民議会選挙が11月28日に実施される。しかし選挙をめぐってはエジプト軍幹部が、ホスニ・ムバラク前大統領を支えた旧与党勢力が議会で大多数を確保できるよう企てている、と非難されている。

 その結果、最大野党勢力「ムスリム同胞団」などのイスラム政党も世俗派政党もそろって選挙をボイコットする構えを見せている、と英デイリー・テレグラフ紙電子版は報じた。

 同紙によればムスリム同胞団は、エジプトを暫定統治している軍最高評議会が10月2日までに選挙制度の見直しを行うよう要求。さもなければ、人々は大規模なボイコット運動を起こすだろうとしている。

 これはエジプト史における、「非宗教的な反体制運動と国を統治する軍人の対立」という新たな章の始まりだ。

 エジプトではリビアやシリアのような国と違い、多くの血が流れることなく革命が達成された。それは軍が果たした役割のおかげだ。エジプト軍は抗議デモを行う民衆への銃撃をはっきりと拒否し、ムバラクに退陣を迫った。だが大統領と親密な関係にあった軍に対しては、今も多くの人が疑いの目を向けている。

小選挙区では旧ムバラク派が有利

 11月の選挙は、革命後のエジプトにとって最初の試金石となる。野党のボイコットが起きれば、この国はあっけなく暴力の渦に巻き込まれるだろう。

 テレグラフは以下のような問題を指摘する。


 60の政党からなる野党連合は、議席の3分の1は無所属の候補者による小選挙区制で選ぶ、という規定の撤廃を要求している。それでは金や知名度のある旧与党勢力が有利になるからだ。

 野党側はさらに、ムバラクとつながりのある元議員の立候補を10年間にわたり禁じる法律の導入も求めている。


 こうした動きに対し、エジプト軍はフェースブックで声明を発表。民主主義や国家の安全を脅かすいかなるものにも反対するとし、「議会選挙への要求から始まった民主的変革を妨げようとする人々」に対して警告すると、AFPは伝えている。

 軍最高評議会は「抗議行動を呼び掛けた人々は、行動を計画し、安全を確保し、すべての私的・公的財産が守られるようにする義務がある」と述べた。「あらゆる軍事施設や重要建物への不法侵入は、エジプトの国家安全保障への脅威だとみなされ、厳格に対処される」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

旭化成、カナダの電池材工場の稼働延期 北米EV市場

ビジネス

米ディズニーが約1000人削減へ、マーケ・TV部門

ビジネス

アンソロピック、評価額最大8000億ドルでVCが関

ワールド

カナダ石油・ガス企業、イラン戦争で利益急増へ 新規
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    高さ330メートルの絶景と恐怖 「世界一高い屋外エレベーター」とは
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 8
    トランプを批判する「アメリカ出身のローマ教皇」レ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中