最新記事

英王室

30年前ダイアナに託した夢が遂に叶う

ダイアナにそっくりのウィリアムと庶民派のケイトは普通に出会い、交際して、結婚する──ダイアナの時の失敗に学んだ英王室は今度は正しい道を歩んでいる

2011年4月26日(火)16時09分
マイケル・ゴールドファーブ

忘れ形見 ウィリアム(前列中央)の結婚で英王室は人気を取り戻す?(97年) Reuters

 イギリスでは今、30年来の悲願が実現しようとしている。第2王位継承者の結婚式を控えてロンドンの街に万国旗がはためき、国中がお祝いムード一色。王室への国民の愛着は確固たるものになる──。

 30年前にチャールズ皇太子とダイアナ・スペンサーの結婚を仕組んだ人々が夢見たのは、一点の染みもない(つまり処女の)若き美女が王室の血統にさらなる繁栄をもたらす理想の結婚。ダイアナはそのイメージどおりの女性だったが、2人のロマンスは思わぬ方向に暗転し、悲劇的な結末を迎えた。

「この20年間で振り子が一周した」と、世論調査会社ICMのマーチン・ブーンは言う。「ダイアナが亡くなる前には王室への支持は明らかに低迷していたが、今では再びもち直している」

 4月29日に行われるウィリアム王子とケイト・ミドルトンの結婚式には常に、母ダイアナの影が付きまとっている。ウィリアムの顔つきと、写真栄えするルックスにはダイアナの面影が色濃く表れている。インタビューの際にウィリアムが自分の手に視線を落としてからケイトをやや斜めに見た仕草も母親譲りだ。

 ダイアナを無理やり既成の枠に押し込もうとして失敗した英王室は今回、結婚までの歩みをウィリアムとケイトに任せるという正しい判断をした。「ロイヤルファミリーは耳を傾けることを学んだ」と、ブーンは言う。「王室が生き残ったのはそのおかげだ」

市民と触れ合うダイアナに英王室が学んだこと

 エリザベス女王をはじめとする王族と王室関係者が学ぶべきことは、山のようにあった。ダイアナの死から1年後の1998年にICMが行った世論調査では、王室のステータスは地に落ちていた。国民のほぼ半数が、ダイアナの死によって王室に傷がついたと答え、50年後に英王室は存続していないと考える人が3分の1に上った。

 だが、ここに来て風向きは変わった。ダイアナは世間から隔絶された環境に苛立ち、王室は一般市民とは別格の存在だという考え方に反旗を翻した。虐待を受けた女性の保護施設やエイズ患者の病室を夜遅くに訪問したダイアナの行為を冷笑するのは簡単だが、カメラのない場所で一人ひとりに声をかける彼女に励まされた人々は皆、その誠実な姿を忘れていない。

 王室もその教訓を学んだようだ。彼らは以前よりずっと分別のある行動をし、国民と触れ合おうとしている。ケイトの出身家庭も庶民そのもの。彼女の両親はパーティー用品のネット販売で財をなした。

 悪名高きタブロイド紙によって世界中に伝えられたウィリアムとケイトの交際も、庶民的な要素にあふれている。裕福な家庭に生まれた男女が有名大学のキャンパスで出会い、デートを重ね、同棲し、破局して復縁し、キャリアを追求し、ついに結婚を決意する──。よくある話だ。2人を取り持つ仲介者はおらず、チャールズがダイアナがデートしたときのように、大勢のボディガードがマスコミを締め出すこともなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

タイ自動車生産、3月は前年比-23% ピックアップ

ビジネス

米500社、第1四半期増益率見通し上向く 好決算相

ビジネス

トヨタ、タイでEV試験運用 ピックアップトラック乗

ビジネス

独失業者数、今年は過去10年で最多に 景気低迷で=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中