最新記事

中国政治

謎だらけの男、胡錦濤の頭の中

問題山積の公式訪米でも胡錦濤の考えは霧の中。知られざる経歴が語る「最後の共産党的指導者」のつくられ方

2011年1月19日(水)10時00分
メリンダ・リウ(北京支局長)

欠点? 大国の指導者としては個性が乏しいと言われる胡(左、右は後継候補の習) Jason Lee-Reuters

 中国の安徽省にある龍川という小さな村に、胡一族の古い祠堂が立っている。立派な建物を外から見る限り、かつてこの国で禁じられていた竜の装飾は見当たらない。ところが門をくぐって後ろを振り返ると、それは見つけられる。大きな木の門の内側に、手の込んだ9頭の竜の彫刻が刻まれているのだ。

 祠堂が建てられた明の時代には、皇帝以外がこのような彫刻を飾ることは許されていなかった。もし当時の宮廷が胡一族の隠された竜の存在を知れば、関係者はことごとく投獄もしくは処刑される可能性があった。しかし、野心を象徴する竜のシンボルが注意深く内側を向いていたおかげで、胡一族は無事に生き延び、繁栄することができた。

 その教訓は、胡一族の48代目に当たる胡錦濤(フー・チンタオ)もしっかり学んでいる。胡は、中国の最高実力者だったトウ小平の「能力を隠し実力を蓄えよ」という言葉を実践している。

 国家主席に就任して8年近くになるが、胡の人物像はいまだにほとんど謎に包まれている。毛沢東やトウ、江沢民など強烈な個性を発散した歴代指導者たちとは極めて対照的だ。1月18〜21日のアメリカ公式訪問によって、胡を取り巻く謎は解消されるのだろうか。

 中国側の思惑によれば、胡の訪米の目的は政策を論じることではない。米政府は、ハイレベル軍事交流の再開、アメリカ製品の輸出拡大、北朝鮮の核問題などを話し合いたいだろう。中国政府も、アメリカの台湾への武器売却をやめさせ、アジアでの米軍の配備を縮小させたい。それに、両国間には人民元の為替レート問題という懸案もある。

 しかし中国の最優先事項は、あくまでも完璧な外交ショーを演出し、胡の存在を強く印象付けることにある。外交を進展させるためには、両国が互いに敬意を抱くことが欠かせないという認識があるのだ。...本文続く

──ここから先は1月19日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年1月26日号をご覧ください。
<デジタル版のご購入はこちら
<iPad版、iPhone版のご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください。

他にも、胡錦濤の後継者とされる習近平(チー・シンピン)国家副主席の妻の型破りなキャリアに関する記事や、本誌テクノロジー担当記者がiPhoneに引導を渡す「スマートフォン戦争はiPhoneの負け」など、他では読めない記事が満載です。
<最新号の目次はこちら

[2011年1月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中