最新記事

朝鮮半島

ゲーツが抱く「日米韓同盟」構想

2011年1月14日(金)17時49分
ドナルド・カーク

 日本では、沖縄県の普天間飛行場の移設問題をめぐるこう着状態に多くの国民が注目している。ゲーツは今回、「沖縄の心情をくみたい」と話し、政府と県の協議の推移を見守る姿勢をみせた。しかし昨年11月の北朝鮮による韓国・延坪島の砲撃事件を受けて、菅直人首相が普天間の県内移設にゴーサインを出すことはほぼ確実だろう。日本人は北朝鮮による拉致問題を忘れていない。韓国の哨戒艦を沈没させ、延坪島を砲撃した北朝鮮が次に何を仕掛けてくるのか懸念している。

 沖縄問題は乗り越えられても、ゲーツが北朝鮮に足元をすくわれる可能性はある。日韓との同盟強化をうたうゲーツ発言の対極にあるもの──それは北京での6カ国協議や韓国・日本との二国間協議など、北朝鮮の対話要求だ。

 これは北朝鮮が得意の交渉ゲームだろう。対する日米韓は「前にも聞いた話」と突き離しつつ、核開発を中止する真剣な意思表示を求めている。しかし北朝鮮側はいかなる妥協も示さないまま、軟化の姿勢を時折みせる。12日には、板門店にある韓国と北朝鮮の赤十字連絡所をつなぐ直通電話を再開させた。

 中国の政府高官は、北朝鮮の対話要求を全面的に支持。来週、バラク・オバマ米大統領と会談する予定の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席は、その要求を改めて伝えると思われる。

地味さが不気味、金正恩の誕生日

 対話を求める北朝鮮の狙いは何かと、専門家たちは首を傾げる。ほぼ間違いないのは厳しい冬を迎えて国民が苦しむ中、北朝鮮が食料と肥料を必要としていること。保守的な李明博(イ・ミョンバク)大統領以前の10年ほどは、韓国は毎年50万トン以上の支援物資を北朝鮮に送っていた。しかし李は、北朝鮮に核開発を中止するよう求め、これを停止している。

 別の見方では、体調の悪い金正日(キム・ジョンイル)総書記が後継者とされる三男・正恩(ジョンウン)を心配し、緊張緩和を求めているのかもしれない。

 金正恩は8日に、28歳か29歳(正確には不明)の誕生日を迎えた。しかし大々的な祝賀行事は行われず、ひっそりと過ぎた。「北朝鮮メディアは誕生日を報道しなかった」と、短波放送で北朝鮮向けにニュースを流しているハ・テクンは言う。「何かが起きるのではないか、とみんな心配している」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、月内の対インド通商交渉をキャンセル=関係筋

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部への住民移動を準備中 避難設

ビジネス

ジャクソンホールでのFRB議長講演が焦点=今週の米

ワールド

北部戦線の一部でロシア軍押し戻す=ウクライナ軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中