最新記事

ブラジル

ルラの後継者を決める「退屈」な大統領選

2010年7月23日(金)13時12分
マック・マーゴリス(リオデジャネイロ支局)

 ブラジルでは、10月3日に行われる大統領選に国民の注目が集まっている。02年の大統領選では左派野党、労働党の名誉党首ルイス・イナシオ・ルラ・ダルシバが勝利したが、当時はようやく経済が回復へ向かい始めたところで労働組合出身のルラが大統領になることへの懸念が高まった。だがルラは見事に経済を回復させた。

 今やGDPが2兆ドルに達するブラジルで、ルラに代わる新大統領を目指す候補は2人。1人はルラが自ら後継者に選んだ元左翼ゲリラのディルマ・ルセフ前官房長官。もう1人は中道左派の前サンパウロ州知事ジョゼ・セラだ。

 世論調査では、2人の支持率は五分五分。ルセフは、ルラの中道路線を継承するためゲリラとの関係は絶ったと世間にアピール。一方のセラは、ルラ政権に極めて批判的な姿勢を取っているが、実績があるルラに比べれば経済学者のセラのほうが国民に信頼を訴えなければならないと笑う人もいる。

 変化を求めない世論のムードは、中南米の政治が成熟した表れとも言えるだろう。10年以上前にベネズエラのチャベス大統領が21世紀型の社会主義革命を掲げて登場し、イデオロギー戦争が激化したが、そんな時期は終わったようだ。

 アルゼンチンやボリビアを除けば、中南米諸国の大半が急速に中道路線へと移行している。チリとコロンビアで今年行われた選挙では保守派が勝利。パラグアイやウルグアイなど、急進的ではない社会主義が主流派を占める国も穏健路線を歩んでいる。

 こうした状況を生んだのはブラジルだ。自由市場のルールに従い、インフレ率と国の債務を低く抑える──ルラがこの信条を固く守った結果、ブラジル経済は安定した。ルセフもセラもルラと同じ路線の政策を唱えている。「チェンジ」なき退屈な選挙こそ、今のブラジル国民の望みかもしれない。

[2010年7月28日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏のFRB理事解任巡る審理開始、裁判所判断

ワールド

プーチン氏、トランプ氏欺くことに 露ウ会談約束しな

ワールド

インド4─6月期GDP、7.8%増 米関税の影響に

ワールド

安全保障巡り「首脳レベルの協議望む」=ウクライナ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中