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中台ECFA締結はトラブルの元?

2010年7月8日(木)13時24分
アイザック・ストーン・フィッシュ(北京支局)

 以前なら考えられない歩み寄りだ。中国と台湾は6月29日、経済協力枠組み協定(ECFA)を締結した。いがみ合ってきた中台が市場開放を進めるというのだ。

 激しい緊張関係がこれで終わると歓迎する声も出ているが、本当だろうか? 協定締結は現在の中台関係が良好であることを示しているものの、将来的に問題を引き起こす可能性がある。

 今回の協定で、台湾経済の年間成長率は1.7%上積みされるとみられている。だがそれは別の問題の火種になる。台湾の経済力が上がれば、中国への影響力が強まるだけでは済まない。いま台湾と「国交」があるのは23カ国だが、この数を増やすために今までより資金をつぎ込めるようになる。

 中国は経済関係を強化すれば台湾をさらに自国の勢力圏内に引き寄せられると見込んでいる。しかし台湾の馬英九総統は12年の次期総統選挙を意識せざるを得ない。彼は「中国の傀儡」と批判されることを恐れ、中国と距離を置く姿勢をことさらに示すだろう。

 今年初めに発表されたアメリカから台湾への64億ドルの兵器売却決定は、そんな動きの一環だと専門家はみている。こうした姿勢が中国の強硬派を挑発すれば、協定の効果はゼロになるだろう。

[2010年7月14日号掲載]

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