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イギリス

ポンド急落が象徴する総選挙の行方

政治の不安定化で財政危機を止める者は誰もいなくなる?

2010年3月11日(木)14時05分
ストライカー・マグワイヤー

総選挙の日取りも決まらないうちから、選挙結果を見越してイギリス通貨ポンドが急落している。

 総選挙は6月3日までに実施されるが、最近の世論調査ではブラウン首相率いる与党・労働党と最大野党・保守党の支持率の差はわずか。どの政党も単独過半数の議席を持たない議会(ハング・パーラメント)になる可能性が出てきた。それと同時にポンドが対ドルで5%急落した。

 ポンドは何カ月も前から下落している。英経済の現状は誰の目にも明らかだ。巨額の財政赤字を抱えている上、景気がなかなか回復しない。最近のポンド急落は偶然ではない。弱い新政府では財政赤字削減に必要な政治的支援は期待できないのではないかと、市場が懸念しているのだ。

 しかし、ハング・パーラメントという形で本当に弱い政府が誕生すれば、かえって予算の使い方が制限できるかもしれない。市場のしっぺ返しで経済が大打撃を受けるのを避けるには、イギリスの政治指導者は市場原理に屈する以外にないだろう。

 今後、総選挙の投票日までにさまざまな変化が起きる可能性がある。ハング・パーラメントが確定したわけでもない。だがそうなれば、次の予算案を作るのは閣僚ではなく市場ということになる。

[2010年3月17日号掲載]

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