最新記事

ブラジル

リオ五輪に向けてスラム浄化作戦

2010年1月26日(火)15時57分
マック・マーゴリス(リオデジャネイロ支局)

 リオデジャネイロは長い間、暴力の蔓延に苦しめられてきた。市民の5人に1人が暮らすスラムには麻薬ギャングがのさばり、無法地帯と化していた。

 だが16年の五輪開催が決まり町の浄化が新たな緊急課題となるなか、市は再びギャングの撲滅に乗り出している。映画『シティ・オブ・ゴッド』の舞台にもなったシダージ・ジ・デウスなど6つの最下層スラムからは、既に無法者が完全に駆逐されたという。

 とはいえ1000の貧民街が存在し、その半分が麻薬組織によって腐敗している現状では焼け石に水だ。警察は今年さらに34カ所を「制圧」する計画だと、リオデジャネイロ州のホセ・マリアノ・ベルトラメ保安長官は言う。

 重要なのは、今回の計画では警察が現地にとどまり続けるということ。以前は取り締まりを行っても、警察が去った後に犯罪者が帰ってくるのを許していた。賄賂を受け取った警察が取り締まりの手を緩めることも多かった。

 今回は大規模な取り締まり後も警備を続行し、警察の存在によって麻薬組織の再興を防ぐ計画だ。パトカーではなく徒歩で巡回を行い、住民に警察の存在を常に認識させるという。さらに、巡回メンバーを新人から選ぶというのも新しい試み。新人なら、まだ汚職に手を染めていないはずだ。

 こうした試みがうまくいくかどうかはまだ分からない。だが確かなのは、今回は世界中が注目しているということだ。

[2010年1月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=大幅反発、米中貿易戦争巡る懸念和らぐ

ビジネス

米労働市場にリスク、一段の利下げ正当化=フィラデル

ワールド

トランプ氏やエジプトなどの仲介国、ガザ停戦に関する

ワールド

トランプ氏、ゼレンスキー氏と17日会談 トマホーク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中