最新記事

アルカイダ

イランに現れたビンラディンの娘

2010年1月19日(火)14時44分
クリストファー・ディッキー(中東総局長)

 09年11月、イランの首都テヘランにあるサウジアラビア大使館を17歳の少女が訪れた。

 彼女の名はイマン・ビント・ウサマ・ビンラディン。国際テロ組織アルカイダの創設者ウサマ・ビンラディンの娘だ。イマンは01年にアフガニスタンからイランに逃れて以来、5人の兄弟姉妹と共にイラン国内の施設で軟禁状態に置かれていたと語り、大使館に保護を求めた。

 問題の施設はアルカイダの幹部も訪れている。サウジアラビア当局者の一部が、03年に同国の首都リヤドで起こった爆弾テロの首謀者とみている面々だ。

 それらの幹部やテロ計画についてイマンが何かを知っているとすれば、テヘランはアメリカのアルカイダ掃討計画の中心地に躍り出ることになる。

 この問題は、イラン当局とアルカイダの関係がいかに奥深く、複雑なものかを示唆している。
 多くの米政府当局者は、シーア派のイラン政府とスンニ派のアルカイダが敵視し合っていると考えているが、それは違う。

 9・11独立調査委員会の報告書は、01年の9・11テロの前に、ハイジャック犯たちがアフガニスタンに出入りするのをイランが手助けしていた「強力な証拠」があると示唆しており、両者のつながりについてさらなる調査を呼び掛けている。

「この問題はイランにとって、まさにパンドラの箱だ」と、問題に詳しいアラビア人の情報アナリストは言う。そしてイマンの登場によって、その箱のふたが開かれた。

[2010年1月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺

ワールド

トルコ、ロ・ウにエネインフラの安全確保要請 黒海で

ワールド

マクロン氏、中国主席と会談 地政学・貿易・環境で協

ワールド

トルコ、ロシア産ガス契約を1年延長 対米投資も検討
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中