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イタリア

集団セックス殺人の「推定有罪」

2009年12月3日(木)17時03分
バービー・ナドー(ローマ支局)

大きく食い違う「事件の核心」

 イタリアの陪審員は、事件に関する報道やネットのブログを見たり読んだりすることを認められているから、世論は裁判の行方に大きな影響を与えうる。巷でよく言われる「セックスに夢中な男好き」というノックス像は、親しい人々の言う彼女の人物像とはかけ離れている。

 11月30日、ノックスの元恋人で、共犯とされるラファエル・ソレチトの弁護団は、ノックスのことを警察署で尋問を待つ間、「現実に押しつぶされそうになって側転をするような無邪気で単純な女の子」だと擁護した。ノックスのことを、言葉も十分に分からない外国で困難な状況に置かれた若い女性として描きだそうとしたのだ。

 ノックスの弁護団も、彼女がかつての上司を犯人として名指しした(のちに無実が判明)のは警察から「何か話をでっち上げろ」と強要された挙げ句のことだったと主張した。またノックスの犯行を示す証拠がほとんどない点を指摘。捜査は初動からの過ちを引きずっており、ノックスはその犠牲者だと述べた。

「われわれは誤認と嘘の砲撃で迎え撃たれた」とダラベドバ弁護士は言う。「真実を隠すことはできても、それを嘘で置き換えることはできない」

 残された最も大きな謎は、なぜどのようにカーチャーが殺されたかだ。検察側と弁護側の主張には大きな隔たりがあり、まるで違う事件の話を聞いているようだ。

 だが判決がどうあれノックスは今後、「刑を逃れた殺人者」か、「混乱したイタリア司法の犠牲者」か、もしくは「罪の報いを受けたアメリカからの侵入者」か、いずれかの役割を演じなければならないだろう。そして役柄を選ぶ権利は認められていない。

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