最新記事

世界経済

FRB、世界経済減速に配慮せずQE終了の構え

ドル高や世界経済の減速という懸念もあるが、アメリカ経済の好調で補えると自信

2014年10月28日(火)17時27分
ミーガン・クラーク

既定路線 イエレンFRB議長の声明やいかに Brian Snyder-Reuters

 ドルの価値は高まり、世界経済の成長も減速するとの予測が出ているにもかかわらず、FRB(米連邦準備制度理事会)は予定どおり、今週の連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和策(QE3)を終了する見通しだ。

 回復基調にあるアメリカの雇用が諸外国の経済の落ち込みを相殺するだろうと、エコノミストたちは指摘する。金利の引き上げは来年の早くて6月、遅くとも12月には行われるとみられる。

 FRBは先々週、消費が回復し、いくつかの業界では賃上げの傾向もみられるとし、米経済は「緩やかな」成長に向かっているとの見方を示していた。

 ただし米経済が健全な一方で、ユーロ圏は低迷しており、リスクを抱えている。
 
 IMF(国際通貨基金)は今月、ユーロ圏が今後6年以内に3度目の景気後退に陥る可能性が40%あると発表。9月のインフレ率がこの5年間で最も低い0.3%を記録したためだ。

 8月には欧州最大の経済国ドイツ輸出が急落。日本と中国の過去3カ月間の経済予測も落ち込んでいる。

 FRBは12年以来、長期国債の買い入れなどで量的緩和策を行ってきた。これにより、2%のインフレターゲットを維持し、金利も低く抑え、経済の活性化に貢献してきた。FRBは9月のFOMC会合の後、経済状況が許せば段階的に毎月の買い入れ額を縮小し、10月にはQE3のを終了すると発表していた。

 9月以来、ドルの価値は高まり、商品価格の下落によりインフレは2%を切った。世界の原油価格はこの2年ぶりの最安値圏にあり、アメリカのガソリン価格は過去4年で最安値を記録した。

「最近のインフレ率の低下は原油価格の下落が原因なので、FRBは予定どおりQE3を終わらせ、来年には金利を引き上げるだろう」と、キャピタル・エコノミクスのシニアエコノミスト、ポール・デールズは述べている。

 ゴールドマン・サックスのアナリストは、QE3の終了を受けた来年の世界経済と米経済の成長率はそれぞれ0.3ポイントと0.1〜0.3ポイントのマイナスと予測。「全体的に見て、それほど衝撃的な減速ではない」としている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪6月失業率は3年半ぶり高水準、8月利下げ観測高ま

ビジネス

米J&J、通期業績見通し上方修正 関税費用予想は半

ビジネス

午前の日経平均は小幅に続落、半導体株安が重し 下げ

ビジネス

長期金利の国民生活への影響注視、為替動向を憂慮=青
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中