最新記事

リビア

オバマの「人道的」対テロ戦争

久々のテロ組織幹部拘束のニュースから見えてくるテロリスト処遇に対するオバマ政権の思惑とは

2014年6月18日(水)14時39分
ジョシュア・キーティング

生ぬるい? オバマ政権のテロリスト対応に共和党からは不満の声も Kevin Lamarque-Reuters

 国際問題でいいニュースのない米政府に17日、リビアのイスラム過激派組織アンサル・アル・シャリアの幹部アハマド・アブ・カッタラが拘束されたという朗報がもたらされた。この組織は12年にリビア・ベンガジの米領事館襲撃事件で駐リビア米大使と3人のアメリカ人を殺害したと疑われている。

 アブ・カッタラの拘束は、無人機攻撃に依存し、キューバのグアンタナモ収容所を閉鎖できなかったと批判されるオバマ政権がテロリスト幹部に今後どう対処するかを示した好例かもしれない。

 アブ・カッタラは週末にベンガジ近郊で、FBI(米連邦捜査局)と協力した米軍によって拘束され、現在、アメリカに向けて移送中だ。アメリカでは民間の法廷で起訴されると見られている。

 今回の作戦は、昨秋にトリポリで拘束した国際テロ組織アルカイダ工作員のアブ・アナス・アル・リビの拘束や、11年にソマリアのテロ容疑者であるアフマド・アブドルカディル・ワルサメの拘束につながった襲撃作戦を想起させる。両者とも海軍の戦艦で尋問され、軍からアメリカの民間の裁判所に身柄が引き渡された。アブ・カッタラは現在、似たような状況下で尋問を受けているとみられる。

 外国で容疑者を拘束して、ミランダ条項(黙秘権など容疑者の権利の告知義務)を読み上げずに尋問をすることの法的正当性は非常に疑わしい。だが米政府は、アルカイダに適用される軍の権限に則してミランダ条項を省くことができ、しかもグアンタナモ収容所にこれ以上テロリスト幹部を増やさないで済む方法として、この方針に落ちついたようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ、クック諸島との関係「リセット」必要 中国と協

ワールド

米が中国の「危険な飛行」非難、南シナ海のフィリピン

ビジネス

英HSBC、24年通期は増益 自社株買いとコスト削

ワールド

中国、中南米に「信頼できる」関係約束 トランプ氏と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 2
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 3
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 4
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 7
    祝賀ムードのロシアも、トランプに「見捨てられた」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 10
    ウクライナの永世中立国化が現実的かつ唯一の和平案だ
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 7
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 10
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中