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リビア

オバマの「人道的」対テロ戦争

2014年6月18日(水)14時39分
ジョシュア・キーティング

受け入れざるをえない国々

 議会共和党の反オバマ議員たちはこれに満足していない。彼らはアブ・カッタラが敵性戦闘員としてグアンタナモ収容所に収容されるべきだと主張するが、裁判所は軍部と民間の裁判所をミックスしたやり方に満足しているようだ。数週間前、マンハッタンの連邦地方裁判所は、地中海の米海軍の軍艦で7日間拘束・尋問されたのは違法だと訴えたアル・リビの主張を認めなかった。ワルサメは11年にニューヨークで罪を認めている。

 秘密裏の拘束から軍艦上での尋問、そして民間法廷での裁判というテロ組織幹部の処遇のあり方は、米政府に都合のいいやり方かもしれない。ただし、リビアやソマリアなど米軍が突然領土侵入できる国でしか使えない。

 襲撃作戦に向けて、リビアの不安定な政府と力を合わせる努力はあまりなされなかった。国内が混乱する中でテロリストを拘束すれば、さらに不安定化するという懸念からだ。リビア議会の議員は、ワシントンポスト紙にこう語っている。「リビア政府にはテロリストを拘束する能力がないようだから、今回のような米軍による襲撃作戦も受け入れざるをえない」と語っている。

 アルカイダの最高指導者だったウサマ・ビンラディンの捕獲作戦は例外として、アメリカはパキスタンのように比較的安定している国ではもっぱら無人機攻撃に依存し、リビアやのように荒れた国では今回のように拘束して軍が尋問し、グアンタナモを避けて通常の裁判所に引き渡す。これが、オバマの対テロ戦争の処方箋のようだ。

© 2014, Slate

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