最新記事

米犯罪

アイスクリームが殺人事件を呼ぶ?

夏になると殺人事件が増えるのはなぜか――アイスの売り上げとの関連性を解き明かす

2013年7月10日(水)17時36分
ジャスティン・ピーターズ

無罪! アイスに殺人の罪を着せるのは筋違いだが

 アイスクリームは殺人の罪を負うべきか――。ルイジアナ州ニューオーリンズの地元紙タイムズ・ピカユーンは今月5日、世界を悩ますこの大疑問に取り組む記事を掲載した。

「殺人事件とアイスクリームの売り上げの相関関係は、昔から統計学や科学の授業で取り上げられてきたテーマだ。アイスの売り上げが増えると、殺人事件の発生件数も増す」と、この記事を書いたピカユーン紙のジョン・ハーパーは指摘する。

 もちろんアイスと殺人の関係性は、統計上の単なる偶然だ。ハーパーの記事を読めば、相関関係と因果関係は別物だと分かる。コカインでも入っているなら別だが、甘くて冷たいお菓子が殺人の原因になるという考えは明らかに馬鹿げている。

 しかし、アイスの売り上げが増える暑い時期に、犯罪の発生率も上がるのは間違いない。

 ニューヨーク・タイムズ紙は09年、ニューヨーク市内の殺人事件数が夏を迎えてから増加しているという記事を掲載した。記事に登場する疾病対策センター(CDC)の調査によれば、全米の殺人事件の件数は7〜9月に上昇する傾向があるという。

 さらにニューヨーク市警のデータでも、同じような傾向が見られた。「気温が上がると外出する人が増え、街は命の危険が高まる場所になる」と記事は論じる。これは一体なぜなのか。記事は次のように分析する。


 夏にはいろいろな集まりが増えるが、同時にお酒やドラッグに開放的になりやすい季節でもある。こうした人々が町の通りやバーに溢れることで、殺人事件が増えると専門家たちは考えている。


 これは他の都市にも共通する傾向だ。シカゴでも、気温の高まりとともに暴力的な事件が確実に増加している。独立記念日があった7月最初の週末は非常に暑かったが、その期間中にシカゴでは70人以上が銃で撃たれ、少なくとも12人が殺された。

 シカゴ・マガジン誌のブログでは、ウェット・モーザー記者が昨年の夏にこの傾向について、「暑いところにいると人は怒りっぽくなる」などと原因を考察している。

 気温と暴力事件の関係性は今後のためにも覚えておいたほうがいい。来年の3月くらいにはどこかの警察署長が、自分がこの町の殺人事件を減らしたなどと手柄を自慢し始めるかもしれない。もうお分かりだろう。夏になってみなければ、本当に殺人事件が減ったかどうかはわからない。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

26年度予算歳出122.3兆円で調整、新規国債は2

ビジネス

三井住友FG、欧州で5500億円融資ファンド 米ベ

ワールド

シリア外相・国防相がプーチン氏と会談、国防や経済協

ビジネス

円安進行、何人かの委員が「物価上振れにつながりやす
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中