最新記事

米安全保障

狙われた?ボストンの「愛国者の日」

爆破事件が起きた州の祝日「愛国者の日」には、これまでも悲劇的な事件が何度も繰り返されてきた

2013年4月16日(火)16時25分
アビー・オールハイザー

無差別攻撃 ボストン・マラソンのゴール付近で起きた爆発の瞬間 Reuters

 4月15日は、米マサチューセッツ州では「愛国者の日」の祝日にあたる。そしてちょうどこの祝日にあたる昨日、同州で行われていたボストン・マラソンのゴール付近で2度の爆発があり、3人が死亡、100人以上が負傷する事件が起きた。

 事件を受けて声明を発表したバラク・オバマ大統領はその点を強調し、「この日は、アメリカが生まれた当時からボストンという偉大な都市が受け継いできた自由と熱烈な独立の精神を祝う日だ」と語った。犯人はいまだ不明だ、とも。

 事件の起きた日が、アメリカにとって意義深い祝日だったと指摘したのはオバマが初めてではない。ツイッターなどでは、毎年マラソンが開催されるこの祝日に事件が起きたことに、特別な意味があるのではないかとささやかれている。

 ここで簡単に愛国者の日についておさらいしておこう。この日は、1775年4月に行われたアメリカ独立戦争の緒戦であるレキシントン・コンコードの戦いを記念したものだ。今ではマラソンが行われる日として有名で、「マラソン・マンデー」とも呼ばれている(9・11同時多発テロを記念した「愛国の日」と混同しないように)。

 事件後すぐにこの祝日の意味に注目が集まったのは、これまでにもこの祝日の前後には人々の記憶に深く刻まれる悲劇的な出来事が、何度も繰り返されてきたからだ。

 オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件(1995年4月19日)、テキサス州ウェーコで宗教団体施設を政府軍が急襲し、火災で74人が死亡した事件(1993年4月19日)、コロンバイン高校銃乱射事件(1999年4月20日)、バージニア工科大学銃乱射事件(2007年4月16日)など。特に、政府軍の攻撃が多くの死者を生んだウェーコの事件により、4月19日は反政府主義者にとって重要な日となった。

 マサチューセッツ州では、かつて愛国者の日は4月19日と定められていた。だが先述した一連の事件が起きる以前の1969年、州は祝日を19日から、4月の第3月曜日に変更。これにより(第3月曜がたまたま19日でなければ)、独立戦争の出来事を記念する日がある意味で2日存在することになり、さらに「愛国」と「反政府」という2つの意味も持つようになった。

 とはいえ、今回のマラソン爆破事件の犯人や動機が明らかになっていない以上、その背後に祝日と絡めた思惑があったと決めつけるのは危険だ。事件の夜にオバマもこう語っている。「まだ犯人も動機も分かっていない。すべての事実が明らかになるまで、拙速に結論を出そうとすべきではない」

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中