最新記事

米大統領選

オバマが就任式に託したリベラルの夢

ヒスパニック系の同性愛者や女性の人権活動家など史上初づくめだった2期目の就任式

2013年1月22日(火)16時55分
プリヤンカ・ボガニ

先達の勇気に 就任式で祈りを捧げるウィリアムズとオバマ(左) Jason Reed-Reuters

 バラク・オバマ米大統領の2期目の就任式は、いくつかの「史上初」に彩られていた。まずキューバ系アメリカ人の詩人リチャード・ブランコが、史上最年少で大統領就任式で詩を朗読する役を任された。移民を両親に持つブランコの選出もヒスパニック系として史上初。同性愛者であることを公に認めている人物としても初めてだ。

 ブランコが読み上げた詩のタイトルは「今日の1日」。アメリカの平凡な日常がどれだけ彼のようなマイノリティーも含めたアメリカ人に恵み深いものかを歌い上げた希望の詩の一部を紹介しよう。


 今日、1つの太陽が私たちの頭上に上り、海や岸の上で燃え上がり、スモーキー山脈の向こうからちらりとのぞき、五大湖の水面に映り、純然たる事実を大草原地帯に広め、ロッキー山脈を渡って行った。その1つの光は家々の屋根に降り注いで目を覚まし、その下の窓の向こうでは、声にならない物語が語られた。

 朝、鏡に映る私の顔、あなたの顔、何百万という顔はあくびをし、その日1日のクライマックスに向けた準備を整える。黄色い鉛筆のようなスクールバスと信号のリズミカルな点滅、そして果物の屋台。そこに虹のように並べられたリンゴやライムやオレンジは、私たちに褒めてもらうのを待っている。

 大きな銀色のトラックに積まれたのは石油や紙、それともレンガやミルク。その車列が、ハイウェイで私たちの横を埋め尽くす。私たちはテーブルを拭き、台帳を読み、命を救い、幾何学を教え、または私の母が20年間そうしてきたように食料品店でレジ係の仕事をする。だから私は、この詩を書くことができる。


 「史上初」はこれだけではない。公民権運動の指導者マーリー・エバーズ・ウィリアムズは、女性として初めて就任式で祈りを捧げる役割を果たした。80歳の彼女は人権活動家の故メドガー・エバーズの妻で、1995年から98年まで全米黒人地位向上協会の会長を務めた人物だ。

 彼女は祈りの中で「これからの人生という旅を勇気づける祈りを捧げるチャンスを与えられたことに感謝したい」と述べた。南北戦争や公民権運動については「奴隷解放宣言から150年、ワシントン大行進から50年、私たちは先祖の霊を祝福する」とし、過去の世代に「彼らの先見性が力をくれる」と語りかけた。「解放の光へと導きたまえ」

 ソニア・ソトマイヨールも「史上初」だ。彼女は初のラテン系連邦最高裁判事としてジョー・バイデンの副大統領就任の宣誓を行った。ソトマイヨールの連邦最高裁判事就任は、バイデンの強力な後押しがあって実現したものだ。

 ソトマイヨールはこの日の自分の役割について、子供のときには想像もできなかったほどあり得ないことだと話した。そう、「夢のようだ」と。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中