最新記事

気候変動

悪夢の温暖化対策ワースト4

シェールガスなど安易な「温暖化対策」に終始した場合、20年後の世界が直面しかねない生き残りの最終手段とは

2012年7月13日(金)14時33分
ウィル・オリーマス

マードックの論理 太陽光発電より洪水のほうがまし(米ノースダコタ州) Allen Fredrickson-Reuters

 過去1年の気温が観測開始以来の最高を記録し、異常気象も続いているアメリカで、メディア王ルパート・マードックがツイッターで以下のようにつぶやき、波紋を呼んでいる。

 「気候変動は非常にゆっくり確実に進行している。だが現時点では、温暖化そのものより解決策の悪影響のほうが大きい。技術進歩で新たに採掘が可能になった天然ガス『シェールガス』は、アメリカの温暖化対策の大きな突破口となる。CO2排出量は石炭や石油の半分だ」

 環境問題ニュースサイト「グリスト」は、すぐさまツイッターで反論。「太陽光パネルは、干ばつや海面上昇より悪いのか?」

 もちろんそんなことはない。問題は私たちが、地球温暖化を著しく遅らせるほど十分な太陽光パネルを設置していないこと。また、当分は設置数が大きくは増えそうもないことだ。それには、マードックのお気に入りらしいシェールガスが安価になってきていることも寄与している(シェールガスのCO2排出量は石炭より少ないが、再生可能エネルギーよりはずっと多い)。

 もしマードックのアドバイスどおり安易な解決策に頼って太陽光発電への出費を惜しめば、気候変動は勢いを増し、20〜30年後には実に恐ろしい解決策しか残らなくなる可能性がある。

 それが、ポピュラー・サイエンス電子版12日付けの挑発的な記事の要旨だ。この記事は、地球温暖化が手に負えなくなった場合、世界にできる最終手段を考察している。以下はその抜粋だ。


■サハラ砂漠とオーストラリア奥地の乾燥地帯にユーカリを植えて森林にし、海水を淡水化した脱塩水で灌漑を行う。脱塩水を作る施設の電力は、多数の原子力発電所を建設してまかなう(考えられるマイナス面:イナゴが異常発生する、鳥インフルエンザが発生する、砂漠に生息する種が大量消滅する、原発が増える、1兆ドルのコストがかかる)。

■大量の植物性ブランクトンを繁殖させるため、海に鉄粉を放出する(考えられるマイナス面:他のすべての海洋生物が死滅する、この方法自体がうまくいかない可能性がある)。

■太陽光線を地球からそらすために、合計16兆枚の鏡を搭載したロケット2000万台を宇宙へ発射する(考えられるマイナス面:もしうまくいけば気温は急低下。気候システムが大混乱に陥る)。

■太陽光線を防ぐ硫酸塩を大気に充満させる。やり方としては、「スタジアムくらいの大きさの気球を、長さ19キロのホースで船に引かせて運び」世界中で破裂させる。またはもっと見た目が派手な方法として、「海軍の艦隊を派遣し、硫酸塩粒子を充填した砲弾を空に打ち上げる」というのもある(考えられるマイナス面:多過ぎてすぐに思い付かない!)。


 こんないちかばちかの手段しかなくなる前に、もっと合理的な手を打つべきだと思うが。

©c 2012, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 6
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中