最新記事

アメリカ経済

それでも金持ちに甘いアメリカ

格差拡大の鬱憤がウォール街デモで爆発しても、懲りない議会は富裕層増税を含むオバマの雇用対策法案を否決

2011年10月12日(水)16時38分
フレヤ・ピーターセン

届かぬ怒り デモが全米に広がるなかでも、議会は雇用創出より金持ち減税を優先(10月6日、ロサンゼルスのバンク・オブ・アメリカで逮捕された女性) Lucy Nicholson-Reuters

 米上院で10月11日、4470億ドル規模の雇用対策法案が否決された。法案は9.1%に上る高い失業率を解消すべく、バラク・オバマ大統領が提案したものだった。

 採決の日、オバマは議員たちに向かって「党利より国益を優先し」、法案を可決するよう呼びかけた。法案は公共事業を増やし、企業への税控除を行うことで数百万の雇用創出を目指していた。

 法案の否決は予想通りの結果だった。とはいえ与党・民主党が過半数を占める上院でこうした事態が起きたことは「手痛い損失であり、景気刺激のための歳出増と超富裕層向け増税に反対する議員たちのせいだ」と、AP通信は報じている。記事にはこうある。


 46人の共和党議員および2人の民主党議員が、4470億ドル規模の法案の議事進行の妨害に加わった。民主党の50人は法案に賛成。(遅れてワシントン入りした民主党の)ジーン・シャヒーン議員がこれから投票して賛成51票、反対48票となっても、100議席の上院で法案審議入りに必要な60票には遠く及ばない。


次の手は「法案の小分け」やFTA批准

 失業率が9%前後で推移する中でオバマはこの数週間、法案への支持を集めるため全米を駆け回った。ほぼすべての公式行事の場で、即時の議会投票を求める発言をしてきた。

 オバマは週末のビデオ演説を恒例としているが、8日には「雇用創出のためのよりよい代案があるというなら、議会の共和党議員はそれを示すべきだ」と語った。

 10日にはツイッターで、有権者にこう呼びかけた。「あなたたちが法案を支持していることを共和党議員に知らせよう」

 雇用対策法案には学校の新改築や交通インフラ整備のための支出、労働者や中小企業向けの給与税削減、退役軍人を雇用する企業への税控除などが含まれている。オバマは法案が「何千人もの教師や警察官、建築労働者を職場復帰させる」としていた。

 一方で共和党を中心に、富裕層への増税で財源をまかなえば投資や経済成長を阻害するという批判もある。

 しかしAP通信によれば、米政府と議会の指導部は「9.1%という厳しい失業率を改善するため、すでに次の手に掛かっている」という。「法案を小分けにして支持を得やすくする、雇用創出が見込める自由貿易協定(FTA)批准に向けた法案を可決するなどだ」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧米の開発援助削減、30年までに2260万人死亡の

ワールド

米、尖閣諸島を含め日本の防衛に全面的にコミット=駐

ビジネス

インド10月貿易赤字、過去最高の416.8億ドル 

ビジネス

原油先物が下落、ロシアが主要港で石油積み込み再開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中