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「私たちは前政権のゴタゴタを引き継いだ」

オバマ大統領一家をシカゴ時代から支えてきたジャレット大統領補佐官が語る「オバマ1年目」の評価とインドネシア訪問

2010年3月12日(金)16時51分
ラリー・ウェーマス

側近であり親友  ジャレット大統領補佐官(左)は公私共にオバマ一家に最も近い存在のひとり Kevin Lamarque-Reuters

 バラク・オバマ米大統領一家がシカゴで暮らしていた頃からの親しい友人であるバレリー・ジャレット大統領補佐官。彼女の主な仕事は、オバマ一家がワシントンで落ち着いて仕事ができる環境を整えることだ。本誌ラリー・ウェーマスが話を聞いた。

----この1年でオバマ大統領の支持率は急落した。

 率直に言おう。私たちは(前政権の)ゴタゴタを引き継いだだけ。1年前、(アメリカでは)1カ月で70万の雇用が失われていた。金融危機の真っ只中にいた。だが私たちはもう1カ月に70万の雇用を失ったりしていない。金融機関を安定化させたのだ。

(とはいえ)失業率はいまだ9・7%で、景気はまだ目指しているところまでは回復していない。こういう経済状況の下では、大統領が行ったように大胆な改革を主導することで、人々が不安や怒りを感じてしまうのも理解できる。

----振り返ってみて、大統領が1年目に雇用創出より医療保健制度改革法案の成立に注力したのは間違いだったと思うか?

 私たちは確かに経済対策に力を入れていた。経済が1年前よりも安定しているという現実をみれば分かる。もちろん、多くの間違いもあった。大統領に最も厳しいのは、大統領自身だ。ただ共和党には、支持を得る最良の方法はすべてに「ノー」を突きつけることだという政治的な計算があったことも知っておくべきだ。

----中間選挙を心配しているだろう?

 中間選挙はまだずっと先。1日1日の世論調査を追っかけている暇はない。(大統領が)何か大きな決定を下したとき、後になってとやかく言うべきではない。そんな大統領なら誰でもなれる。それは(オバマが)目指す大統領の姿ではない。

----ビル・クリントン元大統領は1年目に大した成功を収められず、中道に方向転換した。オバマ大統領は方向転換しないと?

 私は大統領が中道から外れているとは思っていない。彼が人気を博して大統領選挙に勝利した理由の1つは、中道路線をとったからだ。彼が推進する政策をみれば、まさに中道だと分かるだろう。

----大統領が富の再分配、つまり富裕層の富を貧困層に振り分けることを支持しているという見方がある。事実か?

 もちろんでっち上げだ。政府は企業が持続的で健全な成長を遂げられるような環境づくりを助けるためにある。そうした企業活動は、1年半前のような過失や乱用が再発しないよう、規則の枠内で行われる必要がある。ウォール街に罰を与えることが目的ではない。ウォール街を超えて実体経済にまで波及するような大惨事を防ぐためのルールを確認するためだ。

----大統領の発言には「反ウォール街」的なレトリックが多いと思うが?

 大統領が言っているのは、ウォール街のボーナスや巨額報酬の慣習と、実体経済で行われれていることの間に大きなずれがあるということ。(金融業界は)それを理解する必要がある。私たちは必要な金融規制改革を1日でも早く実行に移せるようにしなければならない。実際に改革が動き出せば、人々の理解も得られやすくなるはずだ。

----あなたはイラン生まれですね。

 はい。当時は今とはまったく違う国だった。でもアメリカの外に住んだおかげで、異なる視点や価値観を学ぶことができた。これは私と同じように幼少期をインドネシアで過ごした大統領と初めて食事をしたときにした話だ。

 外国生活は母国のありがたみも教えてくれるし、グローバルな視点も授けてくれる。こうした国際感覚が人生におけるさまざまな決断の場で助けとなる。

----大統領のインドネシア訪問に同行するようだが?

 ええ。大統領はこの訪問を楽しみにしている。世界最大のイスラム教人口をかかえる国だ。昨年のカイロ演説で始まった(イスラム社会との融和を目指す)対話を継続するいい機会になるだろう。

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