最新記事

米メディア

対オバマ人種差別発言、黒人の話も聞け

リード上院院内総務の「オバマは黒人なまりがない」発言をめぐるテレビ討論に出演していたのは、白人だけだった

2010年1月12日(火)16時38分
レーナ・ケリー

肌が白いね 上院民主党トップのリード(右)は、今月9日オバマに謝罪したが(写真は09年12月) Jim Young-Reuters

 リード上院院内総務が08年の大統領選期間中、オバマ候補について「(黒人にしては)白っぽい肌」で「ニグロ(黒人)のなまり」がないと非公式に発言していたことが暴露された。だが、この発言をアメリカにとっての教訓にしなければならないとしたら、この国は私が思っていた以上に人種問題を認めたがらない国だと言えるだろう。

 リードは不用意に言葉を使ったのか。そうかもしれないが、ニグロは、今年のアメリカの国勢調査ですべての国民に示される人種の選択肢の1つでもある。

 ただ、今回の空騒ぎから学べることはある。もしメディアが人種的な中立性だけでなく機会の平等も重視していれば、こうした騒動がいかに教育的な価値を持つかを、改めて示す絶好の機会になった。

 ABCテレビの番組「ジス・ウィーク」でとても面白い場面があった。チェイニー前副大統領の長女エリザベス・チェイニーが、なぜリードがひどい人種差別主義者であるかを説明しようとする一方で、コラムニストのジョージ・ウィルがリードを擁護するために「人種差別の要素は微塵(scintilla)もない」という小難しい単語を使ったのだ。

 だが白人だけで議論しているのを見るのは、あまり楽しいことではなかった。この話題では、1人でも専門家が入っていればもっと活発に議論できたはず。それは必ずしも黒人でなくもいいのだが、私のジャーナリスト経験から言うと、黒人に関する話題について議論するときは1〜2人の黒人に話を聞くのも悪くない。

 人種問題が怖いことは分かっている。自宅以外の場所で、いろいろな人種について自分の考えを述べるほど勇敢な(愚かな?)人は少ない。自らの職を失いかねないからだ。

 だが主流派メディアが人種問題を取り上げるとき、黒人の声を反映させないということが軽々しく許されるべきではない。形式だけの人種の多様性を保つは時代遅れかもしれないが、きちんと取材することは時代遅れではない。多様な意見を紹介すれば、こうした問題に関する報道の質を高めて読者や視聴者のためになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送(11日配信記事)豪カンタス、LCCのジェット

ビジネス

豪当局、証取ASXへの調査拡大 安定運営に懸念

ワールド

豪首相、AUKUSの意義強調へ トランプ米大統領と

ワールド

イラン、イスラエル北部にミサイル攻撃 「新たな手法
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中