最新記事

米大統領選

ノーベル賞でゴア出馬説が沸騰

ノーベル平和賞共同受賞でアル・ゴアの立候補を求める運動は最高の盛り上がりだが、期待先行の感も

2009年10月13日(火)14時49分
ジェイミー・リノ、アンドルー・ロマーノ

高まる期待 ノーベル平和賞の授賞式で演説するゴア(07年12月、オスロ) Bjorn Sigurdson-Scanpix-Reuters

 アル・ゴア前米副大統領のファンは、熱烈な愛情にあふれている。ニューヨーク在住の医療ライター、スティーブン・コーエン(68)も例外ではない。2人の出会いは88年のこと。若くてまだスリムだった民主党上院議員のゴアが初めて米大統領予備選に挑戦したときで、コーエンは「一目ぼれ」した。

「彼は聡明で勇気があり、ほかの人が見向きもしない問題に取り組んでいた」と、コーエンは振り返る。「『負け犬』呼ばわりするライバルもいたが、それは違う。ゴアこそ究極の勝者の一人だろう」

 コーエンは以来、00年までの大統領選はゴアに投票してきた(92年と96年はビル・クリントンだが、それはゴアが副大統領候補だったから)。現在は、ゴアの08年大統領選出馬を求めるNPO(非営利組織)「ニューヨーク・ドラフト・アル・ゴア」の会長を務める。

 10月12日には、朝4時半に起きてテレビの前に陣取った。お目当ては、米国時間午前5時に予定されていたノーベル平和賞の発表。もちろん、ゴアを応援するためだ。

 コーエンのような草の根ゴア支持者はここ数週間、ノーベル平和賞の話題でもちきりだった。賞に詳しい複数の事情通が、今年は気候変動分野の闘士が賞を獲得するとみており、その予想どおり、地球温暖化問題に取り組むゴアとIPCC(気候変動に関する政府間パネル)に平和賞が授与された。

 カリフォルニア州でゴア出馬要請団体を率いるロイ・ゲイハートは賞の発表前、「(ゴアが)受賞したら、大統領選への不出馬はありえないだろう」と期待を語った。

 だが、支持者にとって「不都合な真実」がある。ゴアは立候補を表明していないし、それは今後も変わらないだろうということだ。

 2月に、映画『不都合な真実』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、9月には共同設立した視聴者参加型ケーブルテレビ局「カレントTV」でエミー賞を受賞するなど、最近のゴアはスポットライトを浴びることが多い。しかし大統領選出馬については、黙して語らず。この記事のために、テネシー州にあるゴアの事務所に電話や電子メールで何度か問い合わせたが、回答はなかった。

 とはいえ、断固とした口調で支持者の期待を封じた前回の大統領選と違い、今のゴアは出馬の可能性を完全には否定していない。

ヒラリーを上回る支持率

 全米各地のゴア出馬要請団体は現在、民主党予備選の候補者名簿にゴアを登録しようと奮闘中だ。その一つである「カリフォルニア4ゴア」では8月上旬以来、有志メンバーが2倍以上の1100人に増加した。カリフォルニア州が定める予備選候補者の登録条件を満たすため、州内に53ある下院議員選挙区で民主党員の1%または500人の署名を集めることをめざしている。

 全国規模で活動するドラフト・ゴア・ドットコムが集めた出馬請願の署名は先週、20万を突破。同団体は10月10日、ニューヨーク・タイムズ紙の全面広告でゴアあての公開書簡を掲載し、「アメリカと地球は今こそヒーローが必要だ」と出馬を求めた。

 ノーベル平和賞の共同受賞でゴアの名声は高まり、有権者が最優先課題とみなす温暖化対策の旗手は誰だったか民主党も思い出すはずだと、支持者は考えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中