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米医療保険改革で見過ごされる重要ポイント

2009年9月4日(金)15時20分
ケイティ・コノリー(ワシントン支局)

 米オバマ政権の医療保険改革をめぐる議論は続いているが、いくつもの重要なポイントがないがしろにされている。広範な改革法案のなかでも特に重要と思われる点をおさらいしてみよう。

■医療保険取引所の設置 現在無保険だったり、保険に加入してはいるが保障が十分でない人たちのために「医療保険取引所」を設置する。民間保険会社のものも含めてさまざまな保障プランを比較し、自分に適した保険を選べる。

 保険会社は取引所の規定に従ったプランを提供し、医療費の支払いを拒否したり、既往症の有無などで保険料を変えることはできなくなる。類似の制度が導入されたマサチューセッツ州では、無保険率は大きく減ったという。

■メディケイド枠の拡大 従来、メディケイド(低所得者医療保険制度)に加入できるのは貧困レベル以下の世帯だけだったが、対象となる所得層を拡大。新たに1700万人の加入が可能になる。

■自己負担額の上限設定 法案では入院や病気予防のための措置、救急医療などを「ミニマムサービス」として規定。保険会社は予防措置に患者負担を求めることを禁じられ、他のミニマムサービスに関しても患者の自己負担は1人当たり5000ドル、世帯で1万ドルが上限となる。

■医療の近代化 民間の研究機関コモンウェルス基金によると、アメリカで医療機関の利用者が医療過誤に遭遇する割合は、ドイツやフランスなど他の6つの先進国より高い。法案では、医療過誤の防止と患者の治療歴の保存を目的とした電子カルテの導入促進も盛り込まれた。

■保険料収入のうち医療費支払いの占める割合の引き上げ 法案では、取引所で保険を提供する保険会社に対し、保険料収入の85%以上を医療費の支払いに充てるよう求めている(現在は常時これを下回っている)。

[2009年9月 9日号掲載]

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