最新記事

米社会

同性婚禁止と戦う米記者の告白

同性のパートナーと結婚した1週間後、カリフォルニア州の住民投票で同性間の結婚が禁止になった。 この出来事で立ち上がった記者の「権利のための戦い」とは

2009年4月7日(火)11時50分
デービッド・ジェファソン(元西海岸総局長)

 カリフォルニア州住民投票「提案8号」は、私の人生を変えた。

 11月4日のアメリカ大統領選投票日まで残り1カ月を切った10月初め。大統領選挙と併せて実施される住民投票で、提案8号への支持が広がっている状況が見えてきた。この提案が可決されれば、カリフォルニア州では同性間の結婚が禁じられる。

 私は7年来のパートナーのジェフ・ベクトロフに言った----カリフォルニアの有権者に「誓わせない」と通告される前に、結婚の誓いをしたほうがよさそうだ、と。

 私たちは、ウキウキと結婚式の準備を始めた。ロサンゼルスで一番のベーカリーで、3段重ねのモカチップのウエディングケーキを注文。式で流すフランク・シナトラの曲も準備した(「花嫁」うんぬんという歌詞の定番の結婚式ソングは使えないので)。

 生花店に行ってコサージュの花を選び、高校時代の女友達にテーブルの飾りつけを頼んだ。ニューズウィークの同僚の映画批評家デービッド・アンセンとその友人のメアリー・コーリーは、私たちの大好きな映画『ティファニーで朝食を』のセリフを朗読してくれることになった。

 そして、10月25日。ジェフが母親と一緒に通路を歩き、その少し後ろを私は86歳の父親と93歳の母親に付き添われて歩いた。思いがけずあふれ出しそうになる涙をこらえるために、唇をぎゅっとかみしめた。この日集まってくれた100人の親しい人たちの顔を見ると、みんなのほおにも涙が伝い落ちていた。

 私たちには支えてくれる人が大勢いた。それに、大統領選ではバラク・オバマが勝利に向けて突き進んでいた。よもやリベラルなカリフォルニアの住民が私たちの結婚を「伝統的結婚」への脅威とみなすとは、本当のところ思っていなかった。

 しかし、私たちは世界が見えていなかった。私たちに「ホモ」と罵声を浴びせる人がほとんどいなくなっただけなのに、社会に受け入れられたと思い込んでいた。

 11月4日、カリフォルニアの住民投票で、「結婚は男女間に限る」とする州憲法修正案(提案8号)が可決された。5月の州最高裁判決で認められたばかりの同性婚の権利は再び否定された。

 私たちのようにこの数カ月の間に婚姻手続きをした1万8000組の同性カップルは、婚姻が無効になるのではないかと怯えながら過ごしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪家計支出、1月は上向くもさえず 利上げ控え慎重姿

ワールド

ベネズエラ、近く鉱業改革実行へ 暫定大統領が米内務

ワールド

ドイツ情報機関、ロシアが戦争の真の経済的コスト隠蔽

ワールド

中国、中東紛争仲介へ特使派遣 外相がサウジ・UAE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中